サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する
池村 千秋 日経BP社
グループ:Book /ランキング:82165
価格:¥ 2,310
発売日:2008-01-24 /通常24時間以内に発送
カスタマーレビュー
おすすめ度:
08年最初の良書 サイエンスはビジネスのファンタジー! 
(2008-05-18)
仕事上サイエンスビジネスと関係する事が多いが、常日頃感じていたサイエンスビジネスのもやもやが一気に解消された気がする。
サイエンスビジネスとして、とくにバイオテクノロジーを中心に展開されているが、サイエンスと財務成績が評価基準であるビジネスとの相容れない関係を多角的視点で捉えている。勿論、サイエンスがビジネスにならないという内容展開・結論ではない。
事実、私もビジネス側が想像する未来・期待を十二分にサイエンスは与えていると思う。今日のビジネスにとりサイエンスは、不可欠なファンタジー要素をもっている。ただ、そのファンタジーのからくりを知っておいて損はないとおもう。ディズニーの裏を知って、ファンを辞めた人は少ないはず。
新たな産業組織構造を作り出すために 
(2008-05-02)
引用された文献や資料はやや古いが、論旨は正しく、政策担当者、各企業の企画担当者が議論する上で参考になる内容である。バイオ産業としてどのような有機的(生体的)構造を創るか、単なるmodule vs integralではないハイブリッドなものを考える必要があろう。
バイオ(製薬)産業に身をおく人間は必読! 
(2008-04-07)
製薬産業の進むべき道を考察する上で、示唆に富む一冊。特に以下2点はコア・イシューとして認識しなければならないと考える。
第一、サイエンスビジネスには深刻な不確実性(一次的不確実性)がつきまとっており、かつ、この不確実性は、科学の進歩に伴い、恐ろしいことに、加速度的に増加していくこと。
第二、サイエンスビジネスは「インテグラル型」(すりあわせ型)であるにもかかわらず、「すり合わせる」べきジャンルはすべて相互依存的であり、かつ、急速に進化していること。
以上ともに、バイオ産業特有の課題ではなく、すべての産業に見られる要素、と考えるが、著者は、バイオ産業の場合は、「これらのインパクトは他産業と比較にならない」、と断言する
製薬企業が、短期的利益を得るため、ライセンス活動の条件闘争に没頭している現状を省みて、長期的利益に向けて、製薬産業が本質的な課題に目を向ける第一歩になりえる一冊である。
“バイオテクノロジー神話”の検証? 
(2008-02-08)
上場している米国の先端バイオテクノロジー企業群をひとつの企業と見立て、数十年の収益の推移を追いかけている点が面白かった。結果は悲惨の一語。その上、薬品の「画期性」や「開発効率」の比較でも、既存製薬大手に対して決して優位性を示せていない。
著者は「既に30年たった」と言うが、これには「まだ30年じゃないか!」との反論も恐らくあるだろう。周到なバイオテクノロジー企業の実績の検証部分に比べ、未来への処方箋はやや抽象的に過ぎる印象だ。
誰に、どのような示唆を与えるのか? 
(2008-02-04)
バイオテクノロジーが、産業としてなぜ成功していないのか?を分析した本。
経営学的なアプローチから、バイオテクノロジーが科学として有する特性と、その産業化において重要な観点となる「リスク管理」「すり合わせ」「組織としての学習」を対比し、バイオテクノロジーにおいてはそのような産業構造が適正に設計されていないということを述べている。
本書の構成としては、最初に上記の問題意識が述べられた後、医薬品の開発プロセスやゲノム研究の発展の歴史などの記述が延々と続く。産業構造の説明については、同じ新興産業であるIT産業との対比を主に、MOTや組織論でよく使われる理論的フレームワークを用いて、バイオテクノロジーを産業として見た場合の、サイエンスの特性とのミスマッチを説明している。
一通り読み終わって見ると、結局のところIT業界におけるインテルのような代表的な成功例がバイオ産業にはまだないに等しいので、「なぜうまくいかないのか」を既存の理論フレームに当てはめたところで説得力に欠ける印象がぬぐえない。もちろん、著者もその点については、バイオ産業に適した産業構造と理論フレームを試行錯誤しながら作っていかなければならないとは述べてはいるが、では果たしてこの本を読んで誰に、どんな示唆が与えられるのか?学問としての経営学分野で新しい研究トピックを提示しているとは言えるかも知れないが、研究に携わっている人や、バイオ産業に携わっている人など、実際にバイオ産業のプレイヤーとなりうる人たちに示唆を与えるような内容ではないというのが正直な感想だ。
「イノベーションのジレンマ」のクリステンセンや、「オープンイノベーション」のチェスブロウのように、理論や概念が中心でも実務家にも多くの示唆を与える名著を生み出してきたハーバードビジネススクールの教授の著書にしては、その点で物足りなさを感じるし、却って評価が厳しくならざるを得ない。ビジネス書というよりは経営学の学術研究と割り切るべきだろう。