アンティゴネーの主張―問い直される親族関係
Judith Butler竹村 和子 青土社
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価格:¥ 2,520
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カスタマーレビュー
おすすめ度:
アンティゴネー論現代版 
(2006-10-20)
アンティゴネーは、彼女の叔父であり王であるクレオンの命に背き、血を分けた兄の埋葬を行い死の道を選択する。今までの数多くの批評はこの神話に親族関係と社会的な共同体との相克をよみとってきたが、果たして問題はより複雑ではないだろうかとバトラーは疑問をなげかける。そもそもアンティゴネー自体、オイディプスが知らずに自らの母ともうけた近親姦の絆から生まれた娘であり、そしてアンティゴネー自体も兄に対して死を賭した近親姦の愛を捧げているようにも見えるからである。第三章の「乱交的服従」の章はアンティゴネー論から現在のジェンダー論や親族論に発展させているが、それは近親姦のタブーを最も基礎にもつ親族関係について極めてラディカルに迫っていて、刺激的で興味深く、一読の価値がある。ヘーゲルやラカンのアンティゴネー論をたたき台として繰り広げられるバトラーの「アンティゴネー論現代版」はアンティゴネーをさらに面白く感じさせる契機になると同時に、現代になかば崩れつつある「親族」とは何かというものを根元から再考させる契機となる。
「ジェンダー・トラブル」より先に読んでみては? 
(2006-06-05)
バトラーといえば「ジェンダー・トラブル」ですが、初学者には難解なため、むしろこちらから入っていった方がいいような気がします。ソフォクレスの有名な悲劇の中で、主人公が現王の命に背いて亡兄を埋葬し処刑されるという、たった一つの行為と結果に対象を絞って論じていて、さほど多くの思想家の著作の引用もなく、するすると読めてしまいます。権力と親族関係が絡むジェンダーに関する筆者の考えを俯瞰した上で、セックスとジェンダーの関係について広く論じた「ジェンダー・トラブル」に進んでいくのがいいような気がします。
悲劇のあらすじも本文中に示されていますが、できればソフォクレスの三部作を通読してからの方が、より興味深く読めると思います。
親密なる世界のために 
(2003-04-11)
アンティゴネーというとまず、公的な国家の掟より、私的な兄妹の情を選び取る家族愛の物語、というイメージがある。しかし本書でも議論される通り、「アンティゴネー」という名は、その語源として「反・子孫」「反・血統」の意味を持ち、近親姦を通して「父」や「兄」の定義が捩れあう、攪乱的な親族関係をあぶり出している。本書の副題は"Kinship Between Life and Death"というものだが、これは日本語に直訳できない。邦題は「問い直される親族関係」と意訳されているが、原題に忠実なニュアンスを説明するならば、「親族関係=親密関係が不断に切り分けていく生と死の力学」(「訳者解説」より)ということになる。つまり、"kinship"という概念は、規範的な文字通りの「親族関係」から、より多義的に開かれた「親密性」の領域へとスライドするものであり、血のつながらない者たちのあいだにさえも血の通いあう可能性を信じるバトラーの思想がそこから静かに浮かび上がる。_Bodies That Matter_の第2部にも言えることだが、具体的な文学作品テクストを読み明かしていくバトラーは、実に鮮やかでスリリングだ。高度に抽象化・理論化された『ジェンダー・トラブル』のバトラーが面白いという人にも、苦手だという人にも、ぜひ『アンティゴネーの主張』は一読して頂きたいと思う。