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市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)
John McMillan
瀧澤 弘和
木村 友二
NTT出版

グループ:Book /ランキング:35894
価格:¥ 3,570
発売日:2007-03 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
市場設計をめぐる思想と歴史!―経済学における新たな市場理論に向けて  (2008-09-23)
 全17章から構成される本書は、通常の経済学の入門書(教科書)とは趣向がかなり異なっている。巻末の「訳者あとがき」に明快に解説されているように、各章のタイトルも、一見それがどのような意味を有するものか判断がつかない。読者は「何が書かれているのか」とやや期待と不安を胸に秘めながら本書を読み進める。そして途中ではたと気がつく。その主題が意味するものと、本書が稀にみるユニークな著作であることに。扱われているのは「市場の機能・設計」をめぐる思想と歴史であるが、それは最新の理論的な学術的文献と膨大な歴史的事実によって入念に裏づけられ、市場を単に需給均衡をなす場とみなす古典的な市場理解を超えた新たな思考様式を、経済学を専門的に学んでいない読者にも平易にそして啓蒙的に説明している。これだけの事例を最新の理論的成果によって基礎付ける作業は決して容易なことではない。<制度を考える>叢書として青木昌彦教授が本書を高く推奨する理由も十分に頷けるといえるだろう。

 むろん市場という(社会的)制度は「真空状態」のようなものではなく、それがうまく機能しうるためには、情報流通の円滑性、財産権の保護、約束遂行における人々の信頼の確立、第3者への副次的影響(外部性)の抑制、競争の促進という5つのプラットホームが必要不可欠である。市場はうまく機能することもあれば、問題解決の処理メカニズムとして失敗することもある(同じことが政府・国家にも妥当する)。市場と政府の役割を見定め、よりよい制度設計の理論的営為が望まれる。本書を通じて印象深い銘記すべきセンテンスは数多いが、たとえば「序」にある、「市場の物語は、失望や失敗だけでなく、人間の創意と創造性に満ちているのである」という見解、最終章の「市場の命令」にある、「市場設計の挑戦は、利潤追求を社会的に生産的な方向へと導くメカニズムを考案したり、そうしたメカニズムの進化を促したりすることにある」(327頁)というメッセージ等は、本書を読むうえで絶えず念頭に置いておくべき理念だ。市場システムの利点は、それが「多様性」を容認し「批判」を許容することである(=2つの万歳)という基本的認識を受容し、それを活かしてゆく社会経済システムのあり方を今後も探求してゆくことが必要だろう。

 面白く示唆的なエピソードが存分に盛り込まれた本書は、これからの経済学における新たな市場理論の構築に向けた有益なナビゲーターとなるだろう。個人的には、自分の専門分野についての言及がなされていた、第12章の「草の根の努力」や第15章「空気を求めて」といった諸章がとりわけ印象深かった。難しい内容を易しく、(むろん感情的にではなく)理論的に解き明かすためには、単純に技量の問題のみでなく、その分野に関する自らの学問的スタンスが明確になっていなければならない。多くのことを教示された。著者がゲーム理論やオークション設計の専門家であるという理由だけで、尻込みする必要は全くない。訳文は切れ味よく周到な出来栄え。装丁も鮮烈。A・スミスやハイエクら自由市場をめぐる深い卓見を示した論者がたまに登場するのも嬉しい。市場をめぐる新たな理論的営為の息吹を深部から感じ取れる最良の文献の1つではないか。


制度設計の視点から市場を読み解く  (2008-04-10)
昨年3月に惜しまれつつ他界した応用ゲーム理論の大家故マクミラン教授による「市場」に関する啓蒙書。経済学者が市場の役割について述べているからといって、決していわゆる「アメリカ型市場原理主義」についての論考ではなく、むしろ市場という制度が持つ欠陥やそれを補うための制度設計の重要性が指摘されています。折りしも今年は制度設計に関する理論的貢献にノーベル経済学賞が与えられました。これからますますメインストリームになって行くであろう、経済理論に基づいた制度設計の世界に興味のある方は是非この1冊をどうぞ!

自由経済をよりよく発展させるための制度設計について書かれた本  (2008-03-16)
 経済学の本でもないし、法律の本でもない。市場を創るといっても、新しいマー
ケットを創造するということでももちろんない。

 自由経済をよりよく発展させるための制度設計について書かれた本。論文という
ほど堅くはなく、具体的な実例を挙げてなぜそのようなルールを設計しているのか
とか、何を規制し何を市場にゆだねるか、あるいはそこから生まれる、経済格差、
貧困など負の部分の考え方、対処の仕方まで幅広く言及している。
 エッセイ風の文章ではあるが、扱っているテーマは専門的でなかなか奥深いし、
前提知識が少ないと真に著者が言いたいことがきちんと理解できていないような
気もした。
 しかしそれでも全く退屈な本ではないし、買って時間を使って本と対峙する価値は
十分にある良書だ。




市場は如何にして創られるのか  (2007-08-31)
 原題は"Reinventing the Bazaar, A Natural History of Markets"。標題の通り市場を如何に「創る」かという点に力点が置かれた書であると思う。市場とは「唯一の自然な経済」であり、どの様な環境においても、自生的で立ち直りが早い(ガーナのマコラ市場の事例)。しかし、それは「人間的な不完全性を伴った、人間による発明物」であり、ルール、慣習、制度による支えを必要とする。市場をうまく機能させるには、(1)情報の流通(情報の非対称性)、(2)信頼、(3)競争の促進(独占・寡占)、(4)財産権の保護、(5)外部不経済の抑制、といった課題に応えることが必要である。
 本書のメッセージは、次の2つの皮肉に要約できるという。「貧困を嫌悪している政治的に極左の人々は、貧困を固定化する政策を支持している。市場を尊重する自由放任主義の熱狂的な支持者たちは、市場の崩壊を引き起こすシステムを提唱している。」
 第16章では貧困の問題が取り上げられるが、貧困は、通常は経済成長によって減少する。経済成長は、貧困問題の全てを解決するわけではないが、同時に成長は貧困問題を解決するための不可欠な一部でもある。政府については、大きい政府支出は低成長と関連するが、政府が経済の非常に小さな部分でしかないときにはそうではない。その意味では、「現代経済」はリバタリアン的原理では機能し得ない。


経済学にとって重要なことは何だろうか、それがわかった。  (2007-04-29)
昔、経済学の講義を受けていて、これは何のために学んでいるのだろうかと思ったものだ。極端な場合には、推論能力を鍛えるためだなどといわれたこともある。そういった経験を持つものが本書を読むと、経済学的な推論がどのようなものでどんなに面白く、また重要かがよくわかる。これから経済学を学ぼうとする人はまず本書を読んで社会科学としての経済学がどのような問題を扱っているのか、イメージをつかむことが勧められる。
 また、もう経済学を学んでしまった人が本書を読めば、経済学にとって本当に重要なのは、「環境に対して適切に対応すると言う意味での合理性」と、マクロな経済の現象をモデルとしてはあえて個人の意思決定の結果として描くと言う方法論的個人主義なのだということがわかるだろう。



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