カスタマーレビュー
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どの専門書よりもまずこの本! 
(2008-05-21)
医学の不確実性というのは何も治療現場だけの話ではない。診断そのものも、かつて独立した疾患単位と考えられていた病態が、知見の増加によって統合されたり枝分かれしたりすることが少なくない。中でも、本書で論じられているfrontotemporal (lobar) degeneration、いわゆるPick病を含む病態(FTD/Pick)は、近年もっとも概念の変遷が大きかった神経疾患のひとつである。現在もなお、その概念と分類とについてさまざまな意見があり、恐らく本書で規定されている考え方にも、異論のある専門家は少なくないことと思われる。
それでも本書は、手放しで賛辞を送りたい名著である。約20例の症例記録とその解釈、介護者の心構えから将来の治療への展望まで、FTD/Pickがどのような疾患であり、患者をもつ家族がどのような経験をするか、どう対処すべきかが、平易な英語で実にvividに描かれ、FTD/Pickの理解を著しく容易にしているからである。私が類書でかつて経験したことのないその明快さは、本書が元来非医療者向けに書かれたことにもよるが、何よりも著者自身が疾患を深く理解していることが、その第一の理由であろう。しかも書かれている内容は、神経疾患を専門とする私自身にとっても決して「自明」のことなどではなく、私は何度も「目からうろこ」の思いを味わった。またそれが私個人の問題ではない証拠に、先日あった学会でも、ここに繰り返し書かれていることが恰も新事実であるかのように発表されていた。本書は専門家にとっても貴重な情報を多く含んでいるのである。
斯様に、これは恐るべき本である。認知症に関わるすべての職種の人および本疾患の患者を抱える家族にとっての必読書であると思われ、早急な邦訳が期待される。その際、やや目立った間違いや誤解は修正されることが望まれる。