カスタマーレビュー
おすすめ度:
魔術師 vs 不動にされた男! 
(2008-08-15)
リンカーン・ライム・シリーズは通常日本で発売されるミステリーに比べ頁数
が倍くらいあります。単行本だと二段組で約500頁、文庫本だとたっぷりな上下巻
と読み出があります。今回も犯行現場として少なくとも7箇所丁寧に描かれています。
日本のライト・ミステリーの7冊分の密度です。これだけ風呂敷を広げながら最後
にはすべてのピースが漏れなくきっちり収まるようにはめ込まれているのは、
ディーバーのすごいところですね。
今回の犯人はプリンセス・テンコーで日本でも認知されたイリュージョニストです。
イリュージョニストは誤導(misdirection)といわれるスキルを使ってライムを
幻惑します。誤導とは見てもらいたい場所に注意を引き付けることよって、
見てもらいたくない場所から遠ざけることです。本作品では犯人の誤導、誤導の
連続で何が真の目的なのか最後までわかりません。この技法はどんでん返しの
ディーバーが作品の中でも使用しています。誤導の名手ディーバーがイリュージョニストを
操っているのですから読んでいても何を信用していいのかわからなくなりました。
本作品はプロットが凝っているので、インサイド・ストーリーは控えめですが、
それでもいくつかの名場面も用意されています。サックスと捜査に参加する
イリュージョニストの卵カーラとの会話の中で、サックスに組織で生きていくにあたって、
「何より大切なのは、戦うための度胸ではない。戦うべきときと、戦わずに流す
べきときをわきまえることなの」と言わせています。私も勤務先で理不尽な思い
をしますが、大事なことはまさにこの ―プライドと力― なのですよね。
もうディーヴァーはいいや 
(2008-05-12)
相変わらずのどんでん返しは良いんだけど、何度も「いや、実はXXだから無事だったのだ」みたいな
パターンに逃げるのはどーだろ。
そういう雑さが目立つようになってきたなぁ。どんでん返しも、「誤導」がちょっとロコツだし。
もちろん面白くないわけではないんだけど…「ボーンコレクター」みたいに呼吸するのを忘れるほど
面白いってわけではないな。
もうディーヴァーはハードカバーで読まなくてもいいな。
これぞライムシリーズ! 
(2008-01-10)
前2作「The Empty Chair」と「The Stone Monkey」は番外編的なイメージを受けて、ちょっと心寂しく感じたが、今回は正統派ライムシリーズといった感じで心底楽しめた! 前2作では一人よがりな印象を受けたライムとアメリアの関係も、今回はサラリと描かれていたし、カラの存在もうまくストーリーに絡み合い、爽やかな後読感だった。ディーバーが書きたくてたまらず書いたと自分で語っていただけの事はあると思う。
また、読まれる私は極度のよいの提案する---The Fates by Tino Georgiou.
イリュージョンってすごい!? 
(2007-05-03)
ご存じ、究極の“安楽いす探偵”リンカーン・ライムシリーズ第5弾です。
今度の敵は、不可能を可能にする魔術師、というかイリュージョニストです。
前作ストーン・モンキーのがっかり感を挽回できるかと思ったのですが…。
手錠を抜けたり、鍵を開けたり、誰にもみられずに進入したり、今回も手強い相手なのですが、
その理不尽さも「マジシャンならできます」の一言で片づいてしまうのが何とも…。
組み敷いた相手が、すぐに抜け出して人形にすりかわることに抑えている当人が気づかないなんてありえない!!!と思ったのは私だけでしょうか。
(ちなみのこのくだりは、本筋とは関係ありませんのでご容赦を)。
また、前作あたりから、証拠分析により犯人を解明していく比重がだんだん軽くなり、
むしろ犯人を特定したり追いつめたりするのが、ライムではなくてサブキャラ(今回はマジシャン見習いのカラ)になってきているのも、少々寂しいかな。
ボーン・コレクターのときは衝撃的だった証拠分析も、テレビのCSIをシリーズを見ると、色あせて感じられます。
05年のこのミスの2位なんですけれど…ね。
それから関係ないけど、文中でデビット・カッパーフィールドとかシルク・ド・ソレイユとかと並んで「もっとも有名な女性イリュージュニスト」として
プリンセス・テンコーがあげられていたのを読むとあらためて彼女はグローバル・スタンダードに値するんだなあと思いました。
ライム危機一髪! 
(2006-09-27)
リンカーン・ライムシリーズの5作目。ペースダウンしてしまったThe Empty Chair, The Stone Monkey を経て、やっと読者を夢中にさせた1・2作目のような本領を取り戻した。今回の敵は一筋縄ではいかない、手品とイリュージョンを駆使したConjurer。さすがのライムチームも煙に巻かれ、若い見習い手品師Karaのアドバイスを得て、犯人探しに奔走する。
ライムよりも先に犯人を突き止めるのも、シリーズを読んでいる時の楽しみの一つなのだが、今回はライムが教えてくれるまで別の人物を疑っていて、嬉しい間違いだった。昇進試験にのぞむアメリアの命運が気になったり、閃光と共に消える、捕まえたらやすやす逃げる犯人の鮮やかな手管に驚いたりで、ずっと前に見たデビッド・カッパーフィールド、ロイ&ジークフリードのイリュージョンのワクワク感を思い出した。読後も清々しく、久しぶりに満足出来たライム本だった。