カスタマーレビュー
おすすめ度:
とことん突き詰めたい人向けの名作 
(2008-06-25)
太平洋戦争の起源については、やれ人種偏見だ、アジア開放戦争だ、侵略戦争だ、
帝国主義戦争だ、と意見がいくつもあるが、本書は太平洋戦争に至る様々な政治
(外交)プロセスを丹念に追った学生向け概説書だ。したがって様々な要因・事件・
出来事が簡潔にギッシリ詰まっており、簡単に読める本ではない。
直接、取り扱う時代は満州事変から真珠湾攻撃であるが、たとえば満州事変の章には
ワシントン体制の意義の説明もあれば、コミンテルンとの関係なども出てくる。
全体的にも日米関係の背後で軽視されがちなヨーロッパ諸国(含ソ連)の思惑と
動き、それに日中戦争も絡み、しかも周知のように中国は一枚岩ではなかった。
このように複雑怪奇な国際情勢を一冊の小著に盛り込んであるので、読む方も
大変苦労するが、読破する気力さえあれば最高に面白い本である。
著者の本において何よりも感心するのは、植民地主義が悪かったとか、独立闘争が
絶対的に正しいなどといった善悪論を徹底して排していることである。そんな
紙数があればちょっとでも新たな切り口から歴史事象を見ていこうという欲張りな
学者魂が、本書を貫いている。