レビュー(Amazon.co.jp)
日本語版が待望されながら、刊行までにこれほど時間がかかった作品も珍しい。最初の作品がアメリカで発表されたのは1969年のこと。その後、何回かの改定を経て、1978年に米ダブルディ社から刊行されたが、この時点で「あまりにも長くて、新人の小説としては高くなりすぎる」という出版社側の意向で、キング自身の手で大幅に削除されることになる。その12年後の1990年に同社から、削除した部分を追加した「完全版」が発売された。その後、テレビドラマ化され、日本でも放映されたので、テレビかビデオで見た日本のファンもいるかもしれない。
舞台はアメリカ全土。超悪性のウィルスにより、死者が続出する。このウィルス、死亡率が99%というだけでなく、空気を通して、ごく短時間で感染するのだ。ちょっと風邪ぎみかなと咳き込んだその日のうちに死に至る者も少なくなく、全米でほとんどの人が死に絶えてしまう。しかし、中には感染者や死者と接しているにもかかわらず、生き残る者もいた…。
完全無削除版というだけあって、そのボリュームは半端ではない。上下巻に分かれてはいるものの、上巻だけでも約800ページもある。それでいながら、ぎっしり詰まった膨大な量の言葉が紡ぎ出すキングの世界に、読む手を休めることができない。日常的な場面からいつの間にか非日常的な世界へ引き込まれていく、そんなキングの手法が本作品でも生きていて、「なぜ?」の答えを知りたいがために次々とページをめくってしまう。ウィルスに感染する状態を「感染」という言葉を使わないで状況描写で表現してしまうところがキングの筆力なのだろう。周囲で「ごほっ」と咳の音がするだけで恐怖が押しよせてくる。どこまで読んだら、答えに気づくか。それはキングが読者に突きつける挑戦かもしれない。一気に上巻を読んでしまうと、下巻に手を出さずにはいられなくなる。(つちだみき)
カスタマーレビュー
おすすめ度:
キング究極の傑作 
(2007-03-02)
風邪のような症状が出てやがて死に至るというウィルスが世界中に蔓延し全人類が死滅寸前になるというストーリーは、小松左京の「復活の日」と同じ設定。僅かに生き残った人々が他に生き残った人間を探し回るという設定も、同じく小松左京の「こちらニッポン」を思い起こす。人類が滅亡していく世界というSF小説的なアプローチでこの物語は始まるが、キングはモダン・ホラー作家としてのスタンスなので、やはり超自然現象をベースにした物語をその後展開させていく。世界の他の国はどのような状況になっているかは一切描かず、アメリカのみに限定して、それも街の一般の人々がこの物語の主役となっていく。一般的なSF小説のように世界に蔓延した致死ウィルスに対する国家首脳部の対策や専門科学者の分析等の描写は一切出てこない。軍部施設の関係者の慌てぶりが最初の方で描かれるだけ。まあ、キングにSF小説的展開など誰も期待はしないけど。
つまりアメリカの田舎町のおっさん、おばあちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃんなどの一般人が死滅した世界で壮絶な体験をしながらもプロミス・ランドを探していく。大雑把に言えばそういったストーリー展開になる。とにかく生き残った人にとっては、普段普通に暮らしていた日常生活がいきなり中断してしまうのだ。自分以外の親類はバタバタ死んでいく。友人も。今まで往診してくれた医者も死んだのか来なくなる。街へ出ても他人は皆死んでいる。そのうち電気も止まり家の電化製品は使えなくなる。生きている他者を求めて旅にでる。道路にゴロゴロと転がっている人の死骸を跨ぎながら。
多数の様々な登場人物が出てくるが、ひとりひとりのその人生についても執拗に書き込むキングの筆致がいつにも増して凄く圧倒的だ。
究極の極限状況の中でも人は生きていかなければならない。人間社会をもう一度形成していく術を探っていく。生きていく意味を自分に問いかける。
これ怖かった 
(2006-09-14)
ペーパーバックでこの本を買ったときにその分厚さにまず驚いた。私はスティーヴンキング作品では、初期の頃のデッドゾーン、ファイアスターター、シャイニング、といった古典的な幽霊・吸血鬼・超能力物が好きなのだが(最近のは読んでない。ITでもう無理だと思った)、この本も怖かった。ギャッと叫んで本を壁に投げつけたこともある。最後のデビルマン的な結末にも衝撃を受けた。
このボリュームを飽きさせず読ませる筆力は圧巻 
(2005-05-05)
The Standは、Kingファンの間で特に人気の高い作品です。ホラー色は強くありません。
非常にボリュームがあり、Kingが最も長い歳月(第一草稿だけで16ヶ月)かけて書き上げた長編小説です。Kingは行き当たりばったりで話を作っていくタイプの小説家ですが、The Standでは途中で話をどうまとめればよいか分からなくなり、かなり悩んだようです。また、Kingによると、「暴力による解決は人間の本性と不可分である」というのが、この小説のテーマなのだそうです(詳しくはKingの著書”On Writing” p.238-248参照)。
ストーリー自体はシンプルで、要約すると(以下ネタバレ含む)「殺人ウィルスの蔓延で人類が殆ど死滅 → 善人と悪人が集落を形成 → 集落同士の対立が発生 → 片方が勝利→ ??」。たったこれだけの話です。また、この本のストーリーにおける善と悪の対立では、聖書(とくにヨハネの黙示録)が意識されているようで、聖書に馴染みのない人にはピンと来にくいかもしれません。人によってやや評価の分かれる小説でしょう。
しかし、Kingの他の作品同様、人物描写の細かさは圧巻です。それだけでも読者に最後まで飽きずに読ませてしまう力があるのだから、King恐るべし、です。
また、Kingの文章表現力も素晴らしい。以下は、特に私のお気に入りの部分です(Flaggを血餅や骨片に喩えてしまうところが凄い)。
The country would come alive in all its glorious possibilities, a body politic with its network of roads embedded in its skin like marvelous capillaries, ready to take him, the dark speck of foreign matter, anywhere or everywhere -- heart, liver, lights, brain. He was a clot looking for a place to happen, a splinter of bone hunting a soft organ to puncture, a lonely lunatic cell looking for a mate -- they would set up housekeeping and raise themselves a cozy little malignant tumor.
な、長い・・・ 
(2004-09-27)
キングの初期の作品だそうで、当時の編集者から長過ぎる!と指摘され、発表当時は枝葉部分がカットされたものの、日本でも無削除・完全版が発表されました。
伝染病で人々がほぼ死に絶えた米国で生き残った人々が善と悪に分かれて戦うというストーリーですが、やっぱ長い!ペーパーバックで1140ページですので、普通の2~3冊分あります(邦訳は妙に薄いのが5冊セットです)。
キングにはローラーコースター的に息もつかせぬ展開で一気に読ませる作品もありますが、本作は執拗なまでに細部を書き込み盛り上げていくという部類に属しています。但し、基本のテーマが「善と悪」、「神と悪魔」と宗教色が強く、イマイチ日本人には自分自身の問題としてイメージし辛いのと、コダワリのディテールもやや分り辛い為、なかなか感情移入が出来ません。
1140ページ近く読み進んだその挙句に待ち受ける結末は、余りにもあっさりとした、タネも仕掛けもない「直球勝負」(?)です。その衝撃に感動して涙する人もいるでしょうが、私はと言うと・・・、ドッと疲れました。
my favorite KING 
(2002-11-06)
「これは一度としてわたしの最愛の作品だったことは無いけれども、
それでもわたしの本を喜んでくれる人たちには、
これがどうやらほかのどの作品よりも好まれているらしい」
とはキングのお言葉。
そして私も類に違わずこの本にゴールドメダルを贈りたい。
スケールの大きさ、語りの巧妙さ、何れをとっても凄いの一言に尽きるが、
私を含め多くのキング中毒者にとってこの作品がトップを行く大きな原因は、
群を抜く登場人物達の魅力では無いかと思う。
かつて無い程多くのキャラクターが登場するにも関わらず、
その全ての人物の個性が光っているのだ。
聾唖の青年、知的障害を持つ男性、元・人気歌手、元・平凡なテキサス男・・・
あまりの個性の豊かさに、誰が第一主人公なのかは最後まで読まなければ解らないくらいだ。
勿論キングの人物描写にはいつも驚かされるが、この本は格別。
感情移入しすぎて気持のUP/DOWNに少々疲れてしまった。
そして「デスぺレーション」にも見られたキング独自の宗教観が込められている。
神とは何か?人間とは何か?
人間は滅びる定めなのか?
読んだあとの余韻もまた格別な一冊(二冊?)だ。