レビュー(Amazon.co.jp)
著者マイケル・コーレンは、読みやすい文章で、共感にみちた伝記を書く作家として定評がある。その名に違わず、本書でも、読みやすい「トールキン物語」が語られる。トールキンの伝記は、トールキン死後数年の1977年に出版されたハンフリー・カーペンターの『J・R・R・トールキン』という、ほぼ定番とも言うべきものがあった。だが、20世紀の終わりにあたり、あるイギリスのメジャー新聞が、読者に「この1世紀で最もすばらしい書物は何か」という大々的なアンケート調査を行った。ダントツ1位を獲得したのが『指輪物語』であり、この結果は驚きともに大きな反響を呼んだ。そして本書の登場である。マイケル・コーレンは『指輪物語』をつくったのはいったいどんな人なのか、「トールキン像」をあらためて読者の前に差し出したのである。
12歳で孤児となったが、敬虔なカトリック信者にして優秀なオックスフォード学生、そして生涯の伴侶エディスとの結婚をまっとうする誠実で純粋な青年。3人の息子と1人の娘の慈愛あふれる理想的な父親、そして超一流でありながら学生にも人望の厚いオックスフォード教授。ページを追って読み進めていくと、こんなトールキン像が現れてくる。
あの豊かなファンタジー世界を創造した作家が、こんな模範的な人物であるのかと一瞬違和感を覚えるかもしれないが、それは違う。読者は逆に、こんな人物だからこそ、ビルボやフロドの産みの親であり、まさに『指輪物語』をつくった男だと、深く納得していくことになるだろう。(祐 静子)
カスタマーレビュー
おすすめ度:
やや子供向けなトールキン伝 
(2002-01-12)
文体も内容もやさしく書かれており、児童向けとしては良いのかもしれないが、「指輪物語」を読んだ人にはもの足りないトールキン伝である。激動の時代を生き、オックスフォードの教授であり、強い愛情と頑固さを生涯保ち続けた世紀のベストセラー作家トールキンは、この本で語られるよりもずっと興味深い人物である。
平穏な人生と独創的なファンタジー 
(2001-10-25)
「指輪物語」の熱烈なファンとして、作者トールキンの自伝というと読んでみたくなるのが人情。教授の人生にも波乱や苦悩はあったとは思うが、表面的には平穏で幸福で成功した人生である。だから、読者はちょっと物足りないだろう。さらに言えば、あの独創的なファンタジーがどのように、この平穏な人生から生まれたのか、を読者は知りたがるはずである。そこが深く追求されていない。だが、それでも、この本は「指輪物語」ファンには一読の価値があろう。