The Big Sleep (Vintage Crime/Black Lizard)
Raymond Chandler Vintage Books
グループ:Book /ランキング:31538
価格:¥ 1,631
発売日:1992-08 /通常24時間以内に発送
カスタマーレビュー
おすすめ度:
チャンドラーの出発点:すべては最終章のために 
(2007-07-24)
本書は私にとって、The Long Goodbyeに続く2冊目のチャンドラーだった。The Long Goodbyeの印象を引きずったまま読み始めたので、初めはさほど強い印象を受けなかった。
物語はスターンウッド将軍なる人物から脅迫事件についての依頼をマーロウが受ける場面から始まる。前半から中盤にかけて、この事件に関係した事柄が少しずつ明らかになっていくが、それらはいまいち事件らしい事件に感じられない。脅迫事件についても、結局はカーメンという二人いる将軍の娘のうちの一人が、ガイガーなる「猥本屋」にヌード写真を撮られていたことが原因だったことがわかる。この娘はどうしようもなく幼稚な女で、当事者であるにもかかわらず、ヌード写真を撮られていたことをさして後悔していないかのようだ。マーロウはうんざりしながらも、依頼主のスターンウッド将軍への忠誠心から、かろうじて事件の後始末に関わっていく。
しかしそのうち物語は、前半の解決したかに見える脅迫事件から将軍のもう一人の娘ヴィヴィアンの夫ラスティ・リーガンの失踪事件の謎を中心に展開していくことになる。なぜラスティは忽然と姿をくらましたのか。日頃から仲の良かった義父のスターンウッド将軍にひと言も残さずに。大した手がかりもないまま事は進んでいく。そして、最終章で事の真相がすべて明らかになる。その結末に私は驚くと同時に、不思議な統一感を感じた。さほど探偵ものを読んでいるわけではないが、この最終章の展開と構成は見事というしかない。推理云々という部分に過度に頼るのではなく、登場人物たちの人間関係の中で物語を最後まで引っ張っていくという方法がぎりぎりのところで物語に統一感を与えているということではないかと思う。
途中で投げ出しそうになる読者の方もいるかもしれないが、がんばって最終章までたどり着き、ぜひこの結末を堪能してもらいたいと願う。