The Nature of Alexander
Mary Renault Random House Inc (P)
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価格:¥ 1,512
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カスタマーレビュー
おすすめ度:
古代の世界震撼者・アレクサンダー大王 
(2008-04-05)
メリー・ルノーは百合系の女性で優れた歴史小説を多く書いた。思い出されるのはベルギーの作家マルグリット・ユルスナール。同じく百合系の女性でほぼ歴史小説家と言っていい。クールで贔屓キャラを作らないユルスナールと違って、ルノーは作者のお気に入りキャラが誰か読んでいてよく分かる。全てを突き放して見るユルスナールに対して誰かにある種の理想を託すルノーという印象がある。ルノーのアレクサンダー小説を読むと、アレクサンダーがあまりに素晴らしいので「うーん、人間が果たしてこんなにステキになれるもんなのか」とならなくはないのだが、彼女の歴史知識や見識にプロの古代学者も一目置おいていたのは事実。
本書はルノーのアレクサンダー好きが高じて書かれた一冊。簡潔な伝記で解説書でもある。短くて読みやすい上にアレクサンダーが素晴らしく勇敢で禁欲的でカッコイイ男なのでファンはウットリ読める。大真面目に読むと「古代の英雄って難しい…」とかとか唸ることになるので軽い気持ちでお読みになればいいと思う。しかし分厚い神話の澱を一瞬でも取り払うことは可能で、アレクサンダーの移動距離を見ればいいのだ。人間にここまでの体力と情熱があるものかと茫然とするだろう。生命力とはこのことか?あるいは古代人が仰ぎ見たのは、この燃え盛る生命力であり彼に付いていた「幸運」のオーラだったのかもしれない。
褒めれば幼稚な英雄崇拝に見られるし、貶せばウラナリの道学者に見られるし、現代の歴史学者をかなり困らせる英雄の一人ではある。私がこれまで最も説得力を感じた歴史観はシモーヌ・ヴェイユの「古代ローマ帝国を讃える人間はナチスドイツを讃えよ」という言葉だが(あなた達が崇拝しているのは「力」なのだから、という意味)、彼女のこの言葉はキリスト教信仰の気迫に支えられている。大抵の歴史学者にその手の気迫はない。ちなみにルノーはこの英雄を大いに讃える方を選んだ。これはこれでアリだとは思う。どうせ古代は蜃気楼の彼方だ。