カスタマーレビュー
おすすめ度:
静かな怒り 
(2004-09-28)
~これは1815年にアメリカ、ノースキャロライナに奴隷として生まれた黒人女性 ハリエット ジェイコブズの自伝です。彼女の作品はそのインテリジェントな文章ゆえに、一部では白人のゴーストライターがいたのではないか、またはその控えめな表現ゆえに、制約つきの白人から見た奴隷制の記録ではないか、等の論争を呼びました。しかしその婉曲な、そして語~~られない行間からにじんでくるのは語ることを許されなかった暗黙の拘束、アメリカ北部の白人の目には決して映ることのなかった人権の蹂躙です。黒人奴隷故におきる様々な苦しみは日々彼女たちを襲います。離ればなれに売られてゆく子供たちを必死に買い戻そうとする母親、脱走を試みるも無惨に引きもどされる黒人男性、雇い主に陵辱され、その妻から嫉妬とい~~じめをうけ、果ては身ごもった子供つきで売られてゆく黒人女性、彼女たちには自分の子供の出自を明かす自由すらありませんでした。自由が剥奪される生を可能にした奴隷制について、ときおり筆者が挿入する読者への呼びかけは、奴隷制という社会悪に対する、決して癒えることのない静かな怒りなのです。そして歴史は常に語られないこと、弱者によってつくられ~~るのです。~