カスタマーレビュー
おすすめ度:
ハルキゲニア逆さまやん 
(2007-05-18)
という突っ込みもあるだろう。
ピカイアは最初の脊索動物でもマイノリティーでもなかったし・・・
という突っ込みもあるだろう。
遺伝子解析の観点に乏しい。
という指摘もあるだろう。
が、やはりこれが名著だといえるのは
「細部にこそ神は宿る」
という信念が、豊富な図版、ウォルコット人物像の描写・歴史的考察
などなどの細かな例につぶさに現れており、バージェス頁岩を多角度から
そして事実に基づいて考えることを読者に提供することのできる恐らく唯一の書だからである。
最初にあげたように情報が遅れていたり(’93年出版だからしょうがないが)、
若干「悲運多数死」というグールド独自の進化論がうるさいきらいがあるが、
入門書としては、成功した優れた書だと思う。
知的興奮 
(2007-02-11)
「一体なぜ現存する動物種が生き残ったのか」
進化論とえばダーウィンの説が一般的に採用されている現代だが、
僕にはどうにも腑に落ちない。
生命の神秘を説明しきれていないように思うのである。
本書中に出てくる生物群は、僕の疑問をいや増す。実に不思議な形態の生物達である。
今はかなり有名になった、ハルキゲニアやアノマロカリスだが、最初に読んだ時はとにかく
その形態の異様さに驚いた。
作者の進化論も語られる。それも興味深い。しかし進化にはもっと秘密が有りそうだ。
きっと人知の及ばない・・・。
本書の文面は少し面倒というか、研究者らしい文章で読みづらい点もあることは否めない。
しかして進化論について興味が有る人なら、バージェス頁岩は避けて通れない事柄。
ぜひ読んで、独自の進化論を空想してほしい。
テープを100万回リプレイしても、人類が再び進化することはない 
(2007-01-17)
進化論には学生時分から興味があって、
いまだに気が向くと適当につまみ読みしている。
著者のグールドは修正ダーウィン主義の立場をとる古生物学者。
こちこちのネオダーウィニストであるドーキンスとならんで、
現代の進化論上、絶対にはずせない論客のひとりである。
約5億年前(=カンブリア紀)の地層から、奇妙な形をした動物が大量に発見された。
これを発掘現場の地名をとって「バージェス動物群」という。
本書は、
・バージェス動物群の発見者であるウォルコットの伝記
・バージェス動物群の分類学上の検討
・ダーウィン流の自然淘汰では説明できないバージェス動物群の進化上の解釈
からなる。
バージェス動物群の不思議は2点。
・なぜ、このカンブリア紀にこれほど大量の種が一度に出現したのか
・そのなかから生き残った4種は「自然淘汰」の結果なのか
という点である。
グールドは自然淘汰(=必然)の結果ではなく、偶発であるとする。
「バージェスを起点にして、テープを100万回リプレイさせたところで、
ホモ・サピエンスのような生物が再び進化することはないだろう。」p502
という。
すなわち、生き残った生物は他に比べて何かが優れていたわけではなく、
たまたま運がよかったにすぎない、という立場をとる。
進化論を読んでいると、科学なのか哲学なのか宗教なのか、
なんだかよくわからなくなってしまうが、しかし、その議論はとてもおもしろい。
名著といわれるだけの価値はある。
魅力的なバージェス産動物たち 
(2007-01-08)
・発見者であるウォルコットを軸にしたバージェス頁岩に関わった人たち
・バージェス動物群の実態が明らかになっていく過程
・バージェス産動物の復元図を基にした形態的特徴の説明
・バージェス動物群から導かれる著者の進化論
以上が本書の要旨と言えるだろう。しかし、私が一番魅力を感じたのは妙な形をしたバージェス産動物たちそのものである。ジュラシックパークよりもカンブリアンパーク?を見たくなってくる。著者が述べる進化論については、まだ保留としておく。
熱情は変えるが... 
(2006-11-19)
"断続平衡説"で著名なグールドの「フルハウス」と並ぶ一般読者向け代表作。バージェス頁岩で発見されたカンブリア紀の化石を基に、発見の過程やそれに基づく自説等を情熱的に述べている。情熱的なのは勿論この発見が自説に都合が良いと判断したせいである。過度の冗漫性のおかげで不必要に長くなっている本書を要約すると次の3点に尽きる。尚、本書では一般に使用する多様性とは別に"異質性"という概念も用いている。異質性とはある時代における生物設計パターンの多様性という程の意味である。
(1) 異質性はカンブリア紀に最大となり、現代に向かって徐々に縮小している(ただし、現在の種の多様性はさすがに認めている)。単純な生物から次第に(規則的に)複雑な生物へと進化する生命樹のイメージは間違い。
(2) 歴史のある時点、例えばカンブリア紀で時間をリセットしてリプレイした時、地球上生物は現在と同じ姿となっているだろうか(特に人類は誕生していただろうか)。グールドの持論である「進化は偶然の賜物で、必然ではない」を強調したもの。
(3) カンブリア初期に見られた生物の爆発は、新奇の進化説でのみ説明できる。
(3)は現在でも原因不明で緒説ある。(1)は本書発表後、グールドが異種性と捉えた多くの生物が従来の"門"に属する事が確認されている。(2)は近年"収斂"という概念が取り上げられ、グールドの説には否定的見解が多い。
進化の考え方には未だ決定打が無い。本書はバージェス頁岩の化石の発掘過程、その研究の様子を克明に表したもので、この方面に興味のある方には好適の書である。「フルハウス」と合わせて読むと、グールドの機知と考えが良く分かり得られる所が大きいだろう。