カスタマーレビュー
おすすめ度:
暗黒のクリスマス 
(2007-01-02)
I.アシモフがクリスマスの暗黒面を描いた短編を集めたアンソロジー。
L.キャンベル「煙突」はサンタクロースと煙突と言う絵本のような明るい題材を扱って、日常生活における恐怖と戦慄、そして運命の皮肉を綴った秀抜な作品。R.スティーブンソン「マークハイム」はクリスマスの日に金目当ての殺人を起こした男が、自己を投影した悪魔と問答をするという趣向が光る。H.ラブクラフト「祭祀」はラブクラフト特有の異界の物語で背筋が凍る。H.ウェルズ「ボロ族の魔術師」は呪術が万能の種族の地に足を踏み入れた探検隊の一員を襲う"逆さ首"の悪夢譚。粘着質の恐怖がジワジワと染み込む逸品。J.マコンネル「終身刑」は医学的死が存在しない未来社会における永劫の残酷さを描いた秀作。
明るく楽しい筈のクリスマスを悪夢と恐怖で飾る傑作短編集。
目を背けずに見よ、この悍ましい夜を 
(2004-12-29)
クリスマス―――それは幸せでもないのに笑顔を強要される季節。上辺だけの幸福が氾濫してインフレを起こし、相も変わらぬ不幸の形態がまたぞろ掘り返される奇怪な祝祭の空間。北半球では、冬至を境にして太陽は着実にその支配領域を延ばしてゆき、人々は古い年が終わりつつあり、新しい年が生まれつつあることを知る。だがその前には長い夜がやって来る。一年で最も長く、暗い夜が。その闇に乗じて色々なものが蠢き始める。悪が、罪が、呪いが、憎しみが、怨念が、亡霊が力を取り戻し、忘れ去られていたものどもの存在を主張し始める。それらは決して昨日今日生まれたばかりの新しいものではない。ずっと以前からありふれた日常の底に凝っと沈んで、唯々ひたすらにチャンスを、きっかけを、臨界点が訪れるのを待っていたのだ………。
古い恐怖がある。けばけばしいイルミネーションで街を飾り立て、御馳走を食べ酒を飲んで浪費し、プレゼントを交換し空々しい愛の芝居に陶酔した振りをする位では到底誤魔化せぬ古よりの恐怖が。それは幻ではない。それは現世が幻であることを知らせる為に、我々を呑み込もうと年に一度、口を開く。気付いているだろうか、破局が直ぐそこに迫っていることに。理解しているだろうか、悲惨と戦慄が今にもその巨大な手を伸ばして来ようとしていることに。
外は雪だと云うのに薄暗く火の気のない部屋の隅に蹲って薄っぺらな毛布を引っ被って震えている貴方、思い詰めた様な表情をして一人切りで安っぽいコーヒーを盛んにがぶ飲みしているそう、そこのみじめな貴方。そんな貴方の陰鬱な夜の供となってくれる数少ない本の一冊に、本書はなってくれるかも知れません。