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After the Quake: Stories (Vintage International)
Jay Rubin
Random House Inc (P)

グループ:Book /ランキング:2926
価格:¥ 1,480
発売日:2003-06 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
暗雲を背に輝く生  (2008-08-27)
大地震直後の世に材を求めた短編小説集。六編いずれも珠玉だ。

1995年、阪神北淡地方を襲った震災の恐ろしさは、いうまでもない。関西出身の著者も、かなりの衝撃を受けたことだろう。全編に、死と喪失、破壊と暴力への恐れと不安がちりばめられ、未来の暗さをほのめかす。だがそれだけで終わらないのがよいところ。黒雲が立ちこめるような背景に描かれる生は、みな哀しいが、まわりが暗いだけに、よりきらきらとして見える。目をこらせば、輝く希望が見えてくる。世界はかくもはかなく美しいと教えてくれる作品だ。だが震災当時はそれどころではなかったはず。苦悩を昇華し、ここまでにするには、さぞ努力がいったことと思う。

特に最後の二編がよい。かえるやくまなど動物が出てくると筆致がさえる気がするが、どうだろう。

英文はやさしく読みやすいが、深遠なことをくだいた言葉であらわすのがもともと著者の持ち味だ。原文同様研ぎすまされているだけに、流し読みには向いていない。軽い読み物を求めるなら、ほかの作家をあたるべきだろう。

文化の翻訳は難しい  (2007-08-12)
よくいわれるように、村上春樹氏の文章自体が英語に翻訳しやすいのは確かだろう。この短編集の英訳でも、センテンスのリズムや息遣いまでもが日本文と違和感がないように感じられる。それは、ひとつにはジェイ・ルービン氏の腕前であることはもちろんだが、同時に、村上春樹氏自身の文体が翻訳される英語の文をすでに予感しているからではないかという気さえする。

ただ、多少詳しく見てみると、やはり文化に深く関わる部分の翻訳は難しい。たとえば、当然だが、人名の漢字のもつ意味合いはまったく伝わらない。「蜂蜜パイ」の小夜子もその娘の沙羅も、ただSayokoとSala。(沙羅の方をSaraとしなかったのは、英語のセアラと混同されないようにか)

また、地名のもつ文化的背景も伝わらない。訳者は、「UFOが釧路に降りる」で、〈秋葉原〉には電気街と分かるように説明を加えているし、「蜂蜜パイ」では、「小夜子は浅草の生まれで」という日本語をわざわざ「小夜子は江戸っ子だった。商人階級が何世紀にもわたって暮らしてきた古い町の生まれだった」とパラフレーズして、逆に浅草という地名を省略したりしている。しかし、どうしたって、〈釧路〉という地名のもつ演歌的「最果て」のイメージや、「水戸の老舗の菓子店」に対して日本人がもつ漠たる心象は伝えようがない。

そのほか、「神の子どもたちはみな踊る」における新興宗教の神「お方さま」や、性交するの意味の「まぐわう」の英訳、「アイロンのある風景」の中で啓介が腹が痛くなったときにいう「うんこすりゃ直ると思うんだけど」の訳し方など、いくつかきちんと日米(英)の文化比較を必要とする箇所が出てくる。また、日本語の解釈の誤りからくる誤訳が2箇所ほど見られる。とくに、「蜂蜜パイ」の最後、つまり、この短編集の最後の文の英訳はいささか問題であろう。

ともあれ、このように英語訳が日本語の原文とそれほどズレがなく読めるのは、いかにも村上文学らしい。ひょっとすると、私たちが、裏にある日本語を意識しながら読むせいもあるかもしれないけれど。

訳者にもめぐまれて  (2006-12-08)
原書も勿論好きですが、この英訳もとても素晴らしいと思います。
全てにおいて訳が丁寧で、原書のリズムを壊していないと感じます。
特に”Thailand”は、もともとの設定が英語での物語ということもあるのでしょうが、本当に素晴らしいと思います。
私にとってThailandは原書よりも、むしろ良い、この英訳が原書ではないか?と思いたくなるくらいです。
静かで透明感のある物語が、訳者の英文によって、その輪郭と静寂をよりクリアに、深くしているように思います。
一人きりで静かに何度も読み返したくなる本だと思います。

英語の勉強にも最適!  (2004-01-12)
 村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」(新潮社)の英訳本である。訳者のジェイ・ルービン氏の翻訳は日本語原文に忠実である。「当たり前じゃないか」と思われるかもしれないが、村上春樹の著作の別の翻訳者アルフレッド・バーンバウム氏の訳文と比べると、その忠実な翻訳ぶりが際立つ。異論はあるかもしれないが、村上春樹が現代日本文学の代表をなすひとりであることは間違いないだろう。「村上の美しい日本語がどのような英文になる/なりうるのか?」・・・そういう疑問を持つ人も多いと思う。センスある英語を身につけたい人にもお勧めである。ちなみに、私は英米人の友人複数にこの本を貸したり、プレゼントしたが、非常に好評であった。この本を基に、さまざまなことを話し合う機会も持てた。おそらく、読む者の国籍に関わらず心に触れるものがこの本の底流にあるためだと思われる。最後に非常に私的なことであるが、先日、鹿島灘の打ち寄せる海岸へ行ってきた。この本(短編集)の中のひとつ「アイロンのある風景」の舞台である。波は荒々しく、海岸はごみだらけで、人気がなく、この短編に似つかわしいほどに寒々しかった。



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