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Twenty Years' Crisis, 1919-1939: An Introduction to the Studyof International Relations
Edward Hallett Carr
Harpercollins (Short Disc)

グループ:Book /ランキング:11161
価格:¥ 2,112
発売日:1981-03 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
賛否両論の書籍  (2008-09-03)
 国際政治学における古典中の古典である『危機の20年』を、イギリスの著名な国際政治学者M・コックスの序文付きで再販したものが同書である。内容は46年に出版された「第2版」に基づいている。39年に出版された「第1版」に基づいて同書を訳してくれたならば、「削除・変更された箇所」も含め、カーの認識した「リアルな戦間期の危機」を理解できた筈なので、それが若干残念ではある(後年、彼が認めた様に『危機の20年』は、戦間期の時代背景に強く影響されて書かれている)。

 古典の再販のため、既に同書を改めて買う必要は無いのかも知れない。しかし、コックスの「序文」を読むだけでも買う価値はある。なぜなら彼は、00年前後までの研究史、そしてイギリス・バーミンガム大学所蔵の「E・H・カー文書」を用いることによって、国際政治学におけるカーの評価の「知的漂流」を丁寧に描いているからである。加えて、日本においては一般にあまりなじみのない第2版での彼による「自己検閲」を、コックスが改めて取り上げているのも興味深い。

 しかし、我々はどうしてこうもE・H・カーに惹かれるのだろうか。実に多くの研究者達が、カーを分析の対象としている。39年〜40年にかけての「理想主義者」達、40年代から50年代にかけてのモーゲンソーやトンプソン、50年代〜60年代にかけての「英国学派」、それぞれの立場に基づいた幾分厳しいカーに対する批判、80年代から90年代、そして現在においてもおこなわれている「非リアリスト」的側面の再評価、そして、本書が出版された00年前後に頂点を迎える「カー・リヴァイアル」。これらが示すことは、国際政治学の分野から、何時の時代においても彼と同書が忘れられなかったという事実だろう。

 約70年という歴史の厳しい試練に耐え、今でも我々の興味を惹く『危機の20年』。国際政治学を勉強する1人の学徒として、いつまでも同書から学び、同書を模範とし、そして同書を批判的に捉えていきたいものである。

リアルな「リアリズム」  (2005-11-15)
一般に、カーはモーゲンソーとともにリアリズムの始祖と位置づけられている人物である。
しかし後のネオ・リアリストと呼ばれる人々の言説を想像して本書を読んでみると、まったく印象が異なることに驚かされることと思う。
現在の「リアリズム」と呼ばれる国際政治上の理論、ないし態度は、アナーキーな環境下においては国家間の衝突が不可避であるという前提のもとに立っている。従って、自然とその姿勢は悲観的であり、協調の可能性を過小評価する傾向がある。
しかしカーは、あまりにも理想的に過ぎて現実から乖離してしまった思想を非難する一方で、あまりにも悲観的に過ぎる思考をも非難しているのである。この点が、カーが凡百の自称「リアリスト」と一線を画している由縁であろう。

翻ってわが国で「保守」と呼ばれる人々は「現実を見ろ」という言葉を好んで用いる。しかし彼らの言う「現実」とは何であろうか。
確かに空想的なまでの平和主義は不毛であるし、危険でさえある。その一方で、何らかの危機的状況が発生したときに、それを平和的に解決しうる可能性やヴィジョンを軽視してしまうような過剰に懐疑的な態度も、結局は同根なのではないだろうか。
たとえば現在の中国との摩擦について考えてみるならば、信頼醸成措置や軍縮のような努力を「奇麗事」として一蹴し、ひたすら強硬策をとることを「現実的」と見る向きがある。しかしそのような態度は過度に悲観的な前提に立っているという点で「リアル」な思考とは言えない。

カーの思考は、こうした楽観や悲観を徹底して廃したところに立脚している。そこにあるのは豊富な学識と高い知性に裏打ちされた冷徹な「客観」であり、それこそが「リアリズム」と呼ばれるべきものであろうと思う。


物事を見る態度  (2004-01-31)
本書は一般に国際関係論におけるリアリズムの始祖に位置づけられているようですが、実際に読んで見るとそうしたラベルがあまりしっくりこないと感じるのはおそらくレヴュアーだけではないと思います。近年カーの再評価が進められている(評伝としてJonathan Haslam, "Vices of Integrity: E.H.Carr 1892-1982"、研究書としてCharles Jones, "E.H.Carr and Interantional Relations: A Duty to Lie"、Michael Cox, "E.H.Carr: A Critical Reappraisal"など)のは、この脱歴史化された書を再び自由な視点からの解釈へと返そうということかと思います。

しかし、そうした研究動向やその評価の如何は別としても、同じくカーの『歴史とは何か』と並んで、本書は、国際政治や歴史に関してどうこうという以上に、社会的な物事一般に関する批判的精神の一つの在り方に触れることのできる名著でしょう。

なお、この新版ではMichael Coxによる序文がつけ加えられていて、それがなかなか長く質的にも良いものですので、既に旧版・翻訳を読まれた方も、この序文のためだけに改めて新版を購入して無駄ということはないかと思います。




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