カスタマーレビュー
おすすめ度:
究極のキャピタリズム... 
(2007-12-17)
「左」は「悪」だと信じるアメリカは、Universal Health Care が存在しない。言い換えるならば、国は国民の健康には何ら責任がない。国が国民の健康をまもるというシステムは、社会主義的であり、アメリカの思想とは相反するというわけなのだ。
全ては私設の医療保険会社に任されているアメリカ。本作品は、アメリカの健康保険の抱える問題点を中心に描かれているが、貧しい人々が保険に入れないという周知の事実を繰り返すだけではなく、むしろ、その視点は健康保険の加入者と保険会社へと向けられている。まさに、人の健康を食い物にしている利益追求型の保険会社が、どれだけ人々を守らないかという点が、このドキュメンタリーの背骨なのだ。
しかしながら、Universal Health Care System を持つ国々の描写については、若干の疑問を生じる。私はイギリスについてしか言及できないが、掃除の不徹底による院内感染症の問題、ホームドクター制度が引き起こす専門性の欠如による病気発見の遅延(鬱、中耳炎、ヘルペス等)、有事の際(ガンが発見された時など)のウェイティング・リストの長さなど、手放しで「すばらしい」とは言い切れない現状がそこにはある。見たいものだけ見ているというツッコミが入っても致し方ないであろう。
とはいえ、この手のドキュメンタリーには製作者側の「視点」が必要であるということを忘れてはならない。少々問題はあるとはいえ、国民を守るシステムのある国々とアメリカとの違いを劇的に見る側に知らしめたのは事実である。
問題点を考慮しても「何でもかんでも民営化すればいい」というわけではないということを改めて感じさせてくれるいい出来のドキュメンタリーであるといえるだろう。
ムーア監督が感動作を?! 
(2007-11-19)
お騒がせムーア監督の話題作。ムーア監督ほどメッセージ性の強い作品を作り、社会性と話題性を両立できる監督はいない。新作はニクソン政権以降のアメリカ式医療をミクロな視点で撮ったドキュメンタリ。アメリカの医療を知らない人は一見の価値あり。ムーアが各国(アメリカ、イギリス、フランス、カナダ等)でカメラを回し、医療を取り巻く各国の現況を調査し、アメリカ式医療を糾弾しています。
アメリカでは、国民健康保険がなく、民間の保険会社が医療を取り仕切っているため、医療費の自己負担額が高くて5000万人が十分な医療を受けることができずに暮らしているという。そのためカメラは、医療費が払えず、自分で糸を買ってきて傷口を縫い合わせる人や、費用を考えて医療を諦め死んでいく人々を次々と映し出すことになり、観ているこちらは思わず眼を背けたくなってしまう。それに対しイギリスでは、国民が無料で医療を受けることができ、薬品もまた均一額(1300円程)で購入することができ国民健康保険がとても充実している。「アメリカの医師が、国民からの医療を断ることによりボーナスが上がるのに対し、イギリス人医師は、国民からの医療を多く受けることによりボーナスが上がる」と、ムーアは映画の中でアメリカ式医療システムを皮肉る。またフランスでも、医療が無料であり、社員もパートも医療を受けるために会社を休むことすら当たり前だという。「医療にお金をとる?」「は?」の世界である。(フランスはすごい。大学無料、週35時間労働、5週間有給休暇に加えての医療無料!)で、圧巻はラスト。セプテンバーイレブンの際、人助けのために行動したために難病を患ったアメリカ人が、アメリカで医療を受けるお金がないため、グアンタナモ(第一級のテロリストを収容しているキューバ?にあるアメリカの収容所。なぜか医療費無料。)へ行き医療を受けようと試みるシーンであるが、詳しくは映画にて。
この映画を、一観客として、あーそんなこともあるのかー、海の向こうのアメリカ人は大変だなぁと気楽に観ることは楽しい。けれど、日本の医療もここ数年で、以下の点で、急速にアメリカ式医療に近づいてきているような気がして笑えない。 A.サラリーマンの医療費負担額はいつまでたっても2割に戻らない←戻るわけがない!国民階保険はいつか破綻するのか!? B.難病に指定されている病名の基準はいつまでたっても曖昧なままである←難病に指定されていない難病患者は高額医療費を支払ってぼろぼろじゃないか! C.04年の医師の臨床研修制度改革後に多くの医師は地方の零細病院を選ばなくなってしまった←カムバックドクター!地方に愛を!D.06年の病院診療報酬改悪により多くの私設病院が経営悪化している←医療法人を国営化するつもりか!そんなわけで、悲観的にみればいつかの日本の医療も…と思ってしまう。
日本で、我々にできることは何であろうかと映画を観て思う。日本医師会の応援する自民党に投票することか?よくわからない。個と国の考え方は違うから相反して仕方ない。ま、庶民としては健康に気をつけることが第一であるし、第二には、海の向こうの民主党のヒラリーさんかオバマさんに頑張ってもらい、アメリカ式医療を立て直すことで、アメリカの保険会社が搾取した保険金を還元し、きちんとCSRを果たしてくれる日をのぞむだけですね。そうすれば日本の医療もきっとよくなる。頑張れムーア!頑張れヒラリー!
今回も痛いところをついています 
(2007-10-12)
アメリカにはUniversal Health Care System (皆医療保険)がなく、お金に余裕のある人はプライベートの医療保険会社のプログラムに加入する。 お金に余裕がない人は、映画の中で出ているように、病気にならないよう、怪我しないように過ごし、病気になったり怪我したら病院に大金を払って破産するか、治療をうけずが悪化させるか、自分で傷を縫い合わせるか。。。医療保険に加入していない男性が、二本の指を電動のこぎりでうっかり切り落としてしまい、病院で中指は6万ドル、薬指は1万2千ドル、どっちにする?と選ばされた光景にはぞっとした。 でもこの映画はそういう保険に加入していない人たちのドキュメンタリーではなく、実は医療保険に加入しているのに、相当の医療費の支払いが保険会社から認められず苦しむ人たちのドキュメンタリーです。超営利主義に走る保険会社から医療費を請求するのがあまりに難しいため、病気になったり怪我したりしてもお金が受け取れず破産したり、死んだりしている人がたくさんいる。 Universal Health Care を社会主義だと攻撃するアメリカの政治家、一方でUniversal heatlh care があたりまえの民主主義の先進国、カナダ、イギリス、フランスの様子も紹介され、アメリカの異様さを浮き彫りにしている。最後の方には9/11直後に医療スタッフやボランティアがグラウンドゼロで救援活動を続け、今も呼吸障害やトラウマに悩み、でも国から医療費をもらえず苦しむ様子が映される。アメリカで十分な医療サービスを受けられない彼らがキューバ(アメリカが忌み嫌う社会主義の小さな開発途上国、でも国民はアメリカ国民より健康で、長寿、Universal health care system を持つ)で手厚く治療を受け、涙する姿には考えさせられた。 日本も高齢化云々で医療費の自己負担率が上がった、でもこの映画を見るとその方向が正しいのかどうか考えてしまう。