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音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ
増田 聡
谷口 文和
洋泉社

グループ:Book /ランキング:79287
価格:¥ 1,995
発売日:2005-02 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
音楽の現在  (2008-06-27)
音楽とテクノロジーの関係を考えるためのヒント集。録音技術やDJなどにまで言及しているところは若さがなせる技だろう。音楽って本当に広いですね。

興味深いテーマであるが、底が浅い  (2006-05-07)
 まず、デジタル音楽と言われるものについて、コンピュータによる打ち込み、コンピュータによる歌唱の「改善」などを論じ、もはや、「本当の演奏」、「せーの」とか「ワン、ツー、スリー」で始める生演奏がもはやライブでしかなくなってきたのは、ずいぶん前の話である。
 著名なバンドで、メンバーが一度もスタジオに集まることなく、DATで送られてくるデータに、コンピュータで打ち込んだ自分のパートを上書きしていることも公然の秘密である。
 これでいいかどうかは、個人の好みだが、私は、それじゃあ、いくらなんでも、人間味がないと思う。
 ここから、著作権の方向に話が飛んでいくのだが、弁護士としてこの問題を扱っている人間にとっては、音楽を含む様々なコンテンツのデジタル化は、著作権侵害の問題をクローズアップしていることもここ何年も語られてきている。これに対して、なんら、目新しい、斬新な解決策を出しているわけではない。
 音楽愛好家としても、法律家としてもどっちつかずの中途半端なものと思う。

必須の基本書  (2005-05-19)
多くの論者が賞賛しているように、音楽の現在と未来を考えるための必須の基本書、といえるだろう。
録音テクノロジーの変化は音楽を変え、音楽観を変えてきた。だが、その変化の実像にわれわれが気づくことは少ない。
本書は、気づかずに通り過ぎている音楽の変化の諸側面に、思いがけない角度からあらためて目を向けさせてくれる。
激変する音楽業界の将来を考えたい人々に強くおすすめしたい。
明快な記述と力強い議論は、音楽を愛好するすべての人々に強い印象を与えることだろう。

良くまとまった通史+α  (2005-04-27)
 若手音楽学者の俊英2人による共著。論文集ではなく、全ての文章を著者2人が共同で執筆したものである。

 文章はわかりやすく、増田の師匠である渡辺裕の学風を受け継いだ論考のスタイルは、時に論理の若干の飛躍を手慣れたレトリックで繋ぐ小技が見え隠れするものの、まずは堅実と言って良い。内容もまた渡辺裕の『聴衆の誕生』が論じたものの次の時代にジャストフォーカスしており、現代日本の音楽産業を理解する上で、この2冊は相互補完的なものとして見事にバランスしていると言える。具体的にはレコード技術の出現から現代のDJ・サンプリング文化やデジタルコピー問題、さらにオーディオマニア(彼らはむしろ「ピュア・オーディオ」という呼称を好むが)の存在までを、美学的な視点から過不足なくまとめ上げ、我々が抱いている音楽に関する通念がいかにレコードというメディアそのものの性質に強く影響されているのか、またデジタルオーディオ時代の到来が、いかにしてこの従来的な通念を、メディアの性質の大幅な変更という形で揺さぶっているのかを指摘している。

 また、ポピュラー音楽を研究テーマとする音楽学者が激増している一方で、ポピュラー音楽界独特の用語や歴史に暗い為に、彼らの仕事の内容が正直な話、よくわからなかったという層にとっては、DJ文化やデジタルオーディオについてもわかりやすくかみ砕いて論じられた本書は密かに福音になるのではないだろうか(物事を四捨五入して伝えるという技術において増田は天才的な素質を持っている)。

 不満点としては、著者2人のこれまでの研究を1冊にまとめた為に、若干内容が散漫で章と章の繋がりが薄い事、オーディオマニアの美学的傾向をかなり一元化して論じてしまっている事(「ピュア・オーディオ」の世界では相当な異端思想と見られている長岡鉄男をオーディオマニアの代表として採り上げているし、「原音再生派」は「ピュア・オーディオ」において必ずしも主流の思想ではない)、「未来形」と銘打ったタイトルとは逆に、彼らの分析が現在においてうち切られ、未来予測についてはジャック・アタリの「ノイズ」を唐突に引用して終わらせてしまっている事などが挙げられるが、まずは好著と呼んで差し支えないであろう。


画期的な音楽の語り方  (2005-04-10)
とてもおもしろく、興味深い本。一気に読んだ。

音楽についての語り方の不自由さを著者たちは問題にしている。近視眼的な音楽ビジネスの動向だとか、オリジナリティーの大切さだとか、音楽をめぐっておこなわれているさまざまなおしゃべりは、どれもにたような語り方におちいってしまう。

「音楽未来形」というタイトルをみると、すぐに業界の展望だとか、最新の音楽スタイルを連想してしまうような、不自由でせまい想像力しかもたない語り方。それ自体をいっきにバージョン・アップさせてしまうような、そんなパワーをそなえた本だ。

著者たちは、音楽についての不自由な語り方が発生した要因を、楽譜というテクノロジーの発生から、エディソンが発明したレコードをへて、最近のMP3に至るまでの、音楽とテクノロジーの長いかかわりの歴史をひもとくことによって、精密に検証する。

作品だとか著作権といった、現在の音楽の語り方のなかであたりまえになっている考え方は、実はそんなにあたりまえではないことが、あざやかに示される。

その「あたりまえ」を大胆に、かつ説得的につきくずしてしていくのが、本書の後半部分だ。DJやオーディオマニア、音楽著作権をめぐる事件のような、あたりまえではない現在の音楽のさまざまなあり方の分析に、著者たちの筆はさえわたる。

思想家、ジャック・アタリを参照しながら語られる結論部分は、そのようなあたりまえではない音楽文化が、どのような音楽の未来を指し示しているのか、そのスリリングな謎解きであるかのようだ。

古い不自由な音楽の語り方のなかで、音楽そのものもどんどん元気がなくなっているように感じられる。レトロなロックバンドが再結成をくりかえし、カバー曲や再発ばかりがあふれている。レコード産業の売り上げも、当然のように落ちていくばかりだ。

そんな未来の見えない状況をうち破るように、本書はリアリティのある音楽の未来のひとつを示してくれている。音楽をよりよく変えるためには、音楽を考え、語るときの語り方をこそ、根本から転換しなくてはならない。この本があたえてくれるインパクトあるメッセージは、一言でいうならばそういったものだ。

音楽をとらえる語り方は、「音楽未来形」以前と、それ以後に分かれることになるのかもしれない。そう言いきってしまっても、けっしておおげさではないように思われる。




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