日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)
神門 善久 NTT出版
グループ:Book /ランキング:9689
価格:¥ 2,520
発売日:2006-06-24 /通常24時間以内に発送
カスタマーレビュー
おすすめ度:
日本社会のあり方に指針を与える貴重な書 
(2008-06-05)
本書を、食品偽装、遺伝子組み換え食品、BSE、日本の自給率の低下
などの問題に関する行政批判の一類であると高を括って読み始めると
カウンターパンチを食らうことになる。なぜなら著者は、近年の食と
農をめぐる議論の問題の本質は、我々市民(農民および消費者)の怠
慢と無責任にあると断言しているからである。よって、殆どの人にと
って、本書を読み進めることは、自分が如何にお任せ民主主義に甘や
かされた日本社会の市民であったかということを是認させられ、具体
的行動を強いられるという苦痛を味わうことになるだろ。
本著の中盤ではJAの怪しさ、農地と政治、企業の農業参入に関する問題
が論じられているが、既得権益を握る側がいかに具合よく延命してきて
いるかということを非難するに留まらない。このような現状を作り出し
たのには市民の行政監視の責任放棄が原因でもあり、マスコミが取り上
げ、自分にも被害が及ぶと感じるや否や、行政を批判し、善良な市民面
をするのは卑怯(無意識であっても)だとまで言い切っている。これと
よく似た例として、高層マンション建設反対運動などがあげられる。高
層マンションの建設を抑えたいのであれば、普段から条例作りを進めて
おけばよく、それを怠っておいて、隣地に合法的に高層ビル建設計画が
持ち上がると環境悪化を理由に反対を訴えるといったものだ。その反対
運動に費やすエネルギーロスを考えてば、欧米に見習って、事前に合法
的にトラブルの種を摘み取っておくための市民参加の政治的土壌の培っ
ておくことも必要であろう。このような問題からだけを見ても、常日頃
から自分に関することには責任を持つことが重要であると感じる。
個人的に面白いと思ったのは、「結章」で述べられている、日本農業へ
の外国資本・外国労働力の導入という提案だ。農業の担い手が減ってい
る現状においては妥当な策に思えるし、本当の意味での食の安全・安心
を考えるよい機会になるかもしれない。
詰る所、本書は食と農の枠組みを通じて、市民の責任放棄という日本社
会の病理を糾弾し、キャッチアップを終えた日本社会のあり方に指針を
与える貴重な書である。自分の思考の枠を広げられたという意味でも大
いに読む価値があった。
市民の責任放棄 
(2008-04-26)
終章で著者は、「本書は、食と農の枠組みを通じて、市民エゴという日本社会の病理をみてきた。」と記している。
先にそういう結論だと念頭において読み始めないと、理解しずらい。著者が指摘しているように、われわれがマスコミと官による誘導に乗ってしまっているからなのだろう。
潔く断ち切った... 
(2008-04-06)
刺激的で面白い内容だと思います.
少々前の本になりますが, 岸本重陳「豊かさにとって農業とは」あたりのより平易な文章と学術的なこの本と併せて読んでみるのもよいのではないでしょうか.
農家・官僚・政治家の行動原理をわかりやすく解説している 
(2007-11-22)
筆者は、現代の農業問題は、消費者・行政・農家・政治家がそれぞれが「自分たちに美味しい」ことをしている結果だと説明している。つまり現在の制度自体が問題であると。これが実に直感的にわかりやすい。
例えば、「農地は宝くじ」だから、生産意欲はないのに農家はなかなか手放さない、あるいは、農水省は予算・定員確保のために「国民の食の安全・安心ニーズ」に便乗しているなど。
ことさら難解な書や実例を列挙しただけの書が多い農業関連書において、読みやすさ、わかりやすさという点で、本書は群を抜いている。農業に興味のない方も、都市部在住の方も、必ず身近に感じられる内容なので是非お勧めする。
農家の「宝くじ」を税金で整備している現状を許せますか?
農業関係者はどう評価する? 
(2007-08-02)
著者は学会や著書の中で度々農業関係者(学者・研究者を含む)を批判している。この著書の中においても、批判を展開している。著者の批判の中身は、なぜ農業が衰退しているのに、関係者は危機感を持たないのか、なぜ農業の衰退を止めることができなかったのか、という自己反省を求めるものである。しかし、著者の本来意図している本質的議論に至る前に、残念ながら異端児扱いされ、疎まれる存在になっているのが、農業界(農業経済分野)の現状である。
本書は農業関係者以外の一般の方にとっても、現在の農業界が抱えている矛盾を垣間見ることができる内容となっている。是非、農業の抱えている問題に触れていただきたい。