チェーホフ全集〈7〉 (ちくま文庫)
Антон Павлович Чехов松下 裕 筑摩書房
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価格:¥ 1,575
発売日:1994-04 /只今品切れ中
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精霊の棲む世界 
(2003-07-13)
堀辰雄が、小品「雪の上の足跡」でチェーホフの「学生」について触れている。チェーホフの作品に表れる力強さのみなもとは、その自然の捉え方にあるようだ。
その昔、未だ海や山や草や木に、めいめいの精霊が棲んでいた時、恐らく彼等の動きに則って、古代人達は、美しい強い呪文を製作したであろうが、ランボオの言葉は、彼等の言葉の色彩や重量にまで到達し、もし見ようと努めさえすれば、僕等の世界の到る処に、原始性が持続している様を示す。(小林秀雄「ランボオⅢ」)
堀辰雄の感じたチェーホフの言葉の力強さと小林秀雄の見たランボオの言葉の原始性。その言葉が湧き上がってくる彼らの世界……。
かすかな濁りに包まれた、巨大な、真赤な太陽が、姿をあらわした。まだひんやりし!た、幅広い光の縞が、露のみちた草の中に身をひたし、伸びをしながら、まるで、こんなことにも飽きてはいないのだというところを示そうと努めるかのように、楽しげな様子で、大地に横たわりはじめた。銀色のヨモギ、ノビルの青い花、黄色いアブラナ、ヤグルマギク―これらすべてが、太陽の光を自分自身の微笑ととり違えて、華やかな斑らの衣裳を嬉しげに着かざった。(チェーホフ「幸福」)