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ロシア闇と魂の国家 (文春新書 623)
亀山 郁夫
佐藤 優
文藝春秋

グループ:Book /ランキング:4387
価格:¥ 788
発売日:2008-04-17 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
ロシアと日本は案外似ているかもしれない  (2008-07-28)
この本は、読者がインテリかどうかを試すリトマス試験紙である。宗教(キリスト教、仏教)、政治(民主主義、スターリニズム、ナチズム)、文学(特にロシア文学)、歴史(現代史)。どの知識を欠いても、読み進むことは難しい。(ドストエフスキー論がとっても難しかったので、自分がインテリからほど遠いことを強く自覚させられた。。)

集団のために個を犠牲にすることが強いられ、また強いられることを運命として黙って受容する大衆。集団的な自己犠牲がその文化の本質であるとすると、ロシアと日本というのは、良く似た社会のように思えてくる。私にとって、ロシアとは、ものすごく遠い、異質な世界だと感じていたが、案外日本と深いところで通じているのかもしれない。戦前の日本とスターリニズムのロシア、今の日本とプーチンのロシアとが重なって見える本。

中身の濃さ、充実度+読みやすさ  (2008-05-17)
「カラマーゾフの兄弟」の新訳を訳した、東京外語大学長の亀山さんと、
元外務相で「外務省のラスプーチン」とも言われた佐藤優さん――
この対談が実現しただけでも凄いものだと思うが、中身が圧倒的に濃い。

互いの知識と考えをぶつけ合って、噛み合うところ、噛み合わないところ、
それらが「対談」という形式で、衝突の火花のように読者に迫ってくる。

私は学生時代にロシア文学をかじったが、その後ずっと文学からは離れていた。
だからロシア通でもなんでもない。
むしろ佐藤優氏の「国家の闇」「自壊する帝国」などや、
新訳の「カラマーゾフの兄弟」で、改めてロシアに関心を持ったレベルだ。

お互いがその分野のエキスパート過ぎて、やや難解に走る箇所もあったが、
対談形式による読みやすさが、それを救っている。

レーニン、スターリン、プーチン……ロシアの「闇」の部分に
充分に切り込んでいるとはいえないが、ワクワクしながら新書を読み終えたのは久しぶりだった。
個人的には、「暗殺国家」とも言われるロシアの闇について、もっと触れて欲しかった。
最近ではリトヴィネンコの毒殺、古くはスターリンとトロツキーの確執と暗殺。

ただこれらにほとんど触れなかったのは、おそらく二人の、ロシアへの愛情ゆえなのかもしれない
とも思ったりする。
タイトル通り、「闇と魂の国家」であることを言いたかったのだろう。

精神と物質――魂と闇の対立を、ロシアは乗り越えられるか、という
やや高度(?)な問いかけが、本書の最後でなされる。
「ロシアの魂」という曖昧なものに対する見解も、二人は微妙に違う。
しかしそこでギクシャクしないで読めてしまうのは、亀山・佐藤ゆえだからだろうか。

刺激的な一冊である。

異常なまでに密度の濃い対談です  (2008-05-14)
ロシア文学者亀山氏と、元外務省の佐藤氏の対談。
対談本というのはえてして、同じような考えの人がお互いの話に相槌を打ちながら、平凡な内容がダラダラと続く、というものが多いような気がするが、本書はまったく違う。

お互いのバックグラウンド(亀山氏のロシア文学および文化全般に対し、佐藤氏の外交官としての経験と神学)の幅広い知識を総動員しながら、お互いの考えを認めるところは認めながら、異論はきちんと唱える。
そんな丁々発止のきわめてレベルの高い対談なのだ。

特に、亀山氏のレーニン廟論(レーニンのミイラが残されているのは、逆説的にレーニンが復活しないという証明)やペテルブルグ論(ペテルブルグは「鉄のコルセット」としてロシア文化を締め付けたがゆえに、多くの国で賞賛されるようなロシア文化を築きあげた)には目からウロコが落ちる思いがした。

また、佐藤氏のプーチンの大統領退任後に対する見解(ロシアでは人に権力があるのではなく、地位に権力がある。だから大統領を離れたプーチンに権力が留まるとは考えにくい)やチェコなど周辺諸国が抱えるロシアへの恐怖の正体などは、経験豊富な氏だからこそ語れる、きわめて貴重な視点だった。

と、ここでは書ききれないくらい気づきの多い一冊なのだが、やっぱりあくまで本書は「ロシア好き」がターゲット。
ドストエフスキーを始めロシア文化に対するそれなりの知識がないと、付いていくのは少々厳しいかも・・・。

やや敷居は高いかもしれないが…  (2008-04-29)
本書は、“ドストエフスキー好き”が入り口となってロシア文学に関わり、色々と回り道をしてドストエフスキーに戻った亀山氏による、ドストエフスキーが作品で暗示しているような“魂”を解いてみようとしていて、そこにロシアの宗教や思想に明るく、最近20年程度の社会や経済のウォッチャーでもある佐藤氏が助太刀をして、“ロシア”という不思議な世界の“闇”に光を当てようとしている…という体裁であると思う。「魂が闇を吸い込み、また闇の中に魂が偏在するというイメージ」というのものが、本書を通じて考えることが出来ると思う。

これは何も“ロシア”に限ったことでもないのだろうが、何処かの国や地域に特有な“○○的”な魂というのは「規定し難い」ものなのであろう、ということだけはハッキリした感じがする…

個人的には「“ドストエフスキー”へのガイド本」というような気分で読了した…

白熱の対論!  (2008-04-23)
 2007年は、カラマーゾフの新訳で大いにもてた亀山先生、今回はあの「外務省のラスプーチン」、佐藤優との知的対論集である。どちらも一歩も引かない面白さに溢れているが、読者に相当の知的準備を要求する。すくなくとも、あの「カラマーゾフ」は読んでいるのとそうでないのとは、面白さが格段に違うだろう。当初、亀山は、久しぶりに逢った佐藤を相当程度見くびっていた風がある。しかし、だんだんこいつはなかなかやるぞ、という雰囲気になってきているのが読み手である我々にジンジンと伝わってくる。最終章では、何度も「佐藤さん、ここはどう思いますか」と尋ねている。
 端的にいえば、理論武装の亀山に対し、くそリアリズムで対抗する佐藤、しかし、双方とも相手の言うことをじっくりと聞き、考え、そして応じているから、がっぷり四つに組んだいずれも引かない面白さがある。

 佐藤のくそリアリズム、あのフルシチョフの息子と仲が良かった件は非常に興味深い。当時のロシア人は、ブレジネフよりは、フルシチョフのほうを極端に恐れていたようだが、もう少し突っ込んで、キューバ危機のことをお父っちゃんに聞いておいて欲しかったなあ。
 「ケノーシス(=グノーシス)」に相当時間を割いているのも面白い。ケノーシスが、靖国のこころ、特攻の精神に通じるところがあるとする佐藤の論理、独特の論理。

 ロシア通訳の故米原万里、チェコのクンデラ、ラジンスキーの「アレキサンドル2世暗殺」等々と、話題は尽きない。
二人の論客の、お互いを尊敬しきっているからこそ実現したこの白熱の対談、すごい。



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