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なぜアメリカはこんな酷い国になってしまったのか 
(2008-10-08)
各種統計データを示しながら、いかにアメリカの格差が拡大してきたか、その理由は何か、ということを深掘りしています。
ニューディール政策と第二次世界大戦の戦時統制の影響で、戦後のアメリカ社会は、貧富の差が少ない社会を築くことができました。しかし、著者によれば、レーガン大統領の登場あたりから政治は一部の富裕層が牛耳るようになり、格差は拡大していきました。
貧困層が政治的に力を持たないよう、「保守派ムーブメント」は移民に選挙権を与えないように画策し、さまざまな方策で低所得者の投票率を上げないように工夫しています。
法律的に違法とはいえなくても、人道的とはいえない「保守派ムーブメント」の行動の根底にあるものは何なのか。
著者のクルーグマンは、
「すべての根源は、アメリカの人種差別問題にある」
と結論しています。
貧しい白人を救う政策を実行すれば、貧しい黒人やヒスパニックも一緒に救ってしまう。黒人やヒスパニックを救済するくらいなら、貧しい白人を放置しておくほうが良い。口に出して言わないまでも、多くの白人の根強い人種差別意識が格差を縮めることを拒否している、というのがクルーグマンの主張です。
クルーグマンはアメリカの暗い時代は変わろうとしている、といいます。
アメリカでは白人の人口がが減少し、多くの白人の意識が人種差別的でなくなってきた、という彼の洞察が事実なら、アメリカ社会は「格差が縮小する」という大きな転換点を迎えることでしょう。
折しも、アメリカはもうすぐ大統領選挙。私がアメリカ人だったら、本書を読んだからには、迷わずオバマに投票するでしょう。
アメリカをこんなに酷い国にしてしまったのは「保守派ムーブメント」に支配された共和党のせいなのか。そして、その政治的支配は、転換点を迎えようとしているのか。
答えが出るのは、もうすぐです。
ポール・クルーグマン吠える 
(2008-09-18)
おもしろく読めました。
中産階級が徐々に形成されたのではなく、数年で一気に作られたというのはちょっと意外な指摘でした。
日本でもアメリカの新保守主義に習って、年金や健康保険の民営化や、制度の分割をしようとしてますが、少子高齢化が進んでいた分と、デフレ不況があったぶん、格差社会の到来がアメリカより一足早く来た感じです。
幾つか欠点があり、本書の価値をいくらか損なっている。
(1)全訳でない。
訳者は日本の読者になじみがない部分を削ったと言っているが、どうも訳者が理解できない部分を削ったような気がする。
削った部分に結構割と重要な事柄が書いてありそうな気がしてしょうがない。
(2)翻訳が固すぎる。
分量から考えても、本書をクルーグマンは一般人向けに平易な言葉で、書いていると思う。
「ループゴールドバーグ機械と比較した」なんて、めちゃくちゃ固い訳文だが、要するに目覚ましが鳴ったら無駄に複雑な機械がおもりやら磁石やら、ロープ屋らで、ビー玉が転がって、卵を割って、朝食のハムエッグをフライパンで作る、アレだ。
クルーグマン先生は、そんなに固い口調でものを言ってないと思うぞ
(3)経済について訳者は力不足だと思う。
(4)解説が通り一遍で、経済学から見たクルーグマンの主張の妥当性とか、レーガン以降のアメリカの政治事情の解説がかなりないと日本の読者には分からないと思う。山形浩生氏の翻訳なら、本文の内容が良く理解できる解説がうんと付くと思う。
日本は? 
(2008-08-31)
人種問題はどうやら「移民大国」アメリカの原罪らしい。アメリカはこの問題に永遠に付き合わなければいけない。それに比べれば日本はまだ幸せな国だと言える。
端的に言えば、本書はオバマ候補への応援演説である。しかし当初の目的はその通りでも、本書はそれだけに留まらず、多くの示唆を与えてくれるだろう。
著者はアメリカ人の収入格差が、1980年代以降急速に広がった、と言う。それはレーガン大統領の時代であり、共和党の時代と一致する。
一方これは、ルーズベルトのニューディール以前の時代に戻っただけで、ニューディール以後の30年間が、格差の圧縮された、アメリカとしては特異な時代だったのだとも言える。
しかしその時代は中産階級が繁栄した理想的な時代だっと著者は言う。そして、アメリカをそのような時代に戻すべきだと言うのだ。
そのために先ず行うべきことは、国民皆医療保険の創設であるとする。そして、今までアメリカで国民皆医療保険が実現しなかった真の理由は、人種差別だと指摘する。
また、アメリカの経営者は、分け前を取り過ぎている。彼らの貪欲には限界がないようなので、これには何らかの歯止めが必要だろう。
一方、日本は色々問題はあるが一応国民皆保険が存在する。しかし、日本の経営者もアメリカの経営者に習って高給は取るし、雇用者の給料はケチるしで、格差は開いてきている。この問題に対する解答は本書には当然ない。これは我々が考える他ないのだ。
本書に見られるような議論を通じて再び健全な国を築いていくことを期待したい。 
(2008-08-08)
日本ではインフレターゲティング論者で有名なクルーグマン教授による格差の進むアメリカを考察した書。
本書によれば、アメリカでは、所得分布の最上位(0.01%)が、30年前に比べて7倍も金持ちになっているという。1970年には、平均的な労働者の所得の30倍だったCEOの所得は、今では300倍というから尋常ではない。
これは、レーガン以来の共和党が、金持ち優遇税制や、アメリカ国民全員に福祉を与えると非白人を含むことになるという意図的な人種差別政策を通じて行われてきたという。
この本が書かれた後、オバマ旋風が巻き起こった。歴史的なゆり戻しが起こりつつあるのであろうか。
超格差社会といわれるアメリカ、今やサブプライムローン問題などを通じて疲弊しているように見えるが、本書に見られるような議論を通じて再び健全な国を築いていくことを期待したい。
賛否両論あるだろうけど 
(2008-07-17)
面白く読めましたよ。ただ、クルーグマンのスタンスも変わった気がします。
今から15年以上前、インフレーションターゲティング論で有名になった
頃のクルーグマンは、根底では同様の想いを持っていたと思いますが、
ここまで直接的な批判をすることはなかったでしょう。労働問題・雇用の
問題・格差の問題についてのスタンスは特にそう。古典的な経済思想では
労働運動が格差や賃金等の問題を解決するという考え方はあまり支持されて
いなかったはずですからね。ただ、個人的には労働組合等は必要だと思って
いるので、私としてはクルーグマンの見方に一定の支持を与えます。
(とはいえ政治的偏向や正社員の権利保護に偏っていた日本の労働組合には
怒りに近いものをもっていますが。連合等も最近やっと変わりましたね)
また、クルーグマンに限らずスティグリッツ等のリベラル派経済学者の発言は、
年々強力かつ直接的になっていますね。それだけ危機意識等が高まっているんだと
思われます。また、サブプライム問題を契機に、自由主義に偏り過ぎた経済思想が
アメリカ国内的にも世界的にも批判を受けるようになったという面があるのだと
思います。「市場は歪められる」という考え方でしょうか。
ただ、間違えてはいけないのは、クルーグマンやスティグリッツのように労働問題や
雇用についてリベラル的、左的なスタンスを取っている学者で、公共事業や財政政策
などによる再分配や社会保障の重要性を主張している経済学者はたくさんいますが、
日本のようなデフレ不景気で「金利を上げろ」「金融を引き締めろ」という発言を
してる人は滅多にいませんので注意してくださいね。
日本の左、リベラルってなんであんなに引き締めたがる&公共投資を削ろうとする
のかよくわかりません。普通に考えて失業率は上がるし分配も機能しなくなりますが。
他国の労働党と主張が真逆じゃないですか。そんなに不景気が好きなんでしょうかね。