カスタマーレビュー
おすすめ度:
すべて世はこともなし、かな。 
(2008-02-12)
『海潮音―上田敏訳詩集』です。
国語の授業の文学史で有名ですが、実際に読む機会は少なそうです。
本は、さほど厚くありません。
翻訳者は上田敏ですが、格調高い文体は、もう上田敏のオリジナル詩集といってもよさそうな感じです。詩の翻訳って、大変なのです。
マラルメ、ヴェルレーヌ、ルコント・ド・リール、ロバート・ブラウニングなど多彩な詩人の作品を収録しています。
昔人の文章、ということで、現代人には難解な漢字熟語なども入っていますが、意味が解釈できないということはありませんし、豊富な語彙を自由自在に駆使することで独特さがでています。
ちょっと詩でも読んでみたいけど、どの詩人がいいか分からない、などという向きには、最適かもしれないです。
確かに、文学史に残って然るべき、珠玉の翻訳詩集です。
ひとりの夜に静かに酔う。 
(2007-11-13)
大学時代の友人が薦めてくれた大切な詩集。
文づかひが豊かなきれいな文語体。ヨーロッパの名詩選。上田敏はこの本で偉業を成し遂げたと思ふ。
「海のあなたの」
海のあなたの 遥けき国へ
いつも夢路の波枕、
波の枕のなくなくぞ、
こがれ憧れわたるかな、
海のあなたの遥けき国へ。
―テオドル・オオバネル
「山のあなた」
山のあなたの空遠く
「幸(さいわい)」住むと人のいふ。
憶(あぁ)、われひと〆尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸(さいわい)」住むと人のいふ。
―カアル・ブッセ
「声曲(もののね)」
われはきく、よもすがら、わが胸の上に、君眠る時、
吾は聴く、夜の静寂(しずけき)に、滴(したたり)の落つるを将(はた)、落つるを。
常にかつ近み、かつ遠み、絶間(たえま)なく落つるをきく、
夜もすがら、君眠る時、君眠る時、われひとりして。
―ガブリエレ・ダンヌンチオ
あぁ、なんてロマンチック。好きです。素敵
眠れない夜とかに、一人で時々パラパラ読み返したりしてます。
言葉が綺麗です 
(2007-06-04)
翻訳作品集、ということは原作があるということです。
ですが、この中に収められている詩は全て、新しい作品になっているような気がします。
日本人の耳に馴染みやすい5・7・5のリズムを使った翻訳は、思わず口に出して読みたくなるようなもの。
単なる”訳”ではない、言葉一つ一つへのこだわりが、どの詩も綺麗に見せてくれます。
一生に一度は読んでみてほしい一冊です。
文芸文化に触れる 
(2004-09-20)
このレビューを書いている2004年からおよそ100年前にあたる1905年に『海潮音』は刊行された。
フランスの象徴派、高踏派の作家たちの詩を訳したものだ。
収められている作品を十分理解するには、作者たちのバックグラウンドに踏み込まなければならないものがほとんどである。
だが、格調高い文体とリズムを味わっているうちに、『海潮音』を貫く世界観のイメージが頭の中に広がったような気がする。
刊行されてから1世紀の間、様々な教養人が読みつないできたであろう『海潮音』。
すでにその価値は最高級の文芸作品の位置にあるように思う。
『海潮音』とそれを生み出した上田敏に敬意を表し、星5つをつけました。
だれもが美しい詩の世界へ誘われます 
(2002-03-20)
ふと心に詩がほしくなるとき、真っ先に浮かんでくるのがこの詩集です。いつとはなしに覚えた一遍の詩が上田敏の翻訳と知ったのは、かわいがってくれた向かいの古い家のお姉さんが、この本を私に残してお嫁に行ったあとのことでした。
上田敏のこころよいリズムと美しい言葉の響きは、私をいつも私をまだ見ぬ世界へ、秋のロマンチシズムへと誘ってくれます。
カール・ブッセもヴェルレーヌも、上田敏の感性に翻訳されたことをどんなに喜んでいることでしょう。