寡黙なる巨人
多田 富雄 集英社
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価格:¥ 1,575
発売日:2007-07-26 /通常24時間以内に発送
カスタマーレビュー
おすすめ度:
生命(いのち)を掴み直し、育て直した巨人 
(2008-09-05)
免疫学の分野で世界的業績を称えられた多田富雄は、2001年脳梗塞に倒れ、言葉機能を失い右半身不随の身となった。
本書は、倒れたその日から闘病とリハビリの日々を経て、闘病とリハビリと生きる証としての文筆活動に傾注する現在の姿の自画像と、その日々が生み出した各誌紙への小論により構成されている。
医学者である多田と患者である多田の視点から、リハビリ医学の未発展部分とリハビリ現場の貧弱な体制が、施設名を実名で告発する。
2006年、医療保険の規則変更により、著者の様なリハビリにより身体機能の回復と機能低下の防止を励んでいた人々を奈落の底に突き落とすリハビリの日数制限が行われた。
多田はその日数制限に、言論をもって立ち向かった。中央社会保険医療協議会の土田前会長の英断により規制の緩和が図られようとしたが、厚生労働省官僚による陰湿な妨害工作が行われた。それらの経過も本書により明らかにされる。
多田の能や演劇文化論等の多方面にわたる活動の軌跡も本書の広がりを作っている。
病に倒れながらも、その中から今語るべきことを、リハビリで習得した動く左手でのワープロを使用し、語り続けた論考をまとめた一冊です。
生きる事、死ぬこと、死生観 
(2008-01-27)
日本を代表する免疫学者の脳梗塞から右半身不随、言語障害からの「生きる」とは何か、を綴っている。
1934年生まれの多田さんであり、免疫を少しでもかじった人はおそらく全てが名前は知っている。そういうオイラも知っている位だから。
2001年に突然倒れて生死を彷徨う、そしてリハビリを余儀なくされ、左手だけでワープロを操作する。本書の前半部は倒れてから1年ほどの闘病記であり、後半部は種々な媒体に連載した手記でもある。読み出して、まず思ったのは、これほど高名で東大医学部出身、さらには芸術にもその才能がある多田さんが、現状の医療体制に悪口をぶちまけ、特にリハビリに関する日本のレベルの低さをとうとうと語る姿勢である。さらには死の恐怖を綴る。人間の本質は誰もが同じなのであろう。柳澤桂子さんの難病の手記も同じように感じた。逆に言えば、科学者と言うものは理詰めで思考するから、論理的でない文脈を受け入れられ難くしているのかもしれない。
あるいは死と対峙することで生への活力を生み出すのだろうか。
どこか、星野富弘さんの詩画や池田晶子さんの文脈とは異なってみえる。
いずれにせよ、「生」とは何か、「死」とは何かを障害と言う状況の中で思考する姿を包み隠さずさらけ出している。そんな事を「巨人」でもない「弟子」もいない小市民は感じた。
脳梗塞で頑張る人など五万といる 
(2007-12-17)
脳梗塞は三大成人病。すなわちこの障害を患っている人の数は計り知れない。誰にでも起こりうることであり、別段驚くことではない。そんな○千万人にもなる莫大な患者数の中で、著者以上に悲しみ、苦しみ、著者以上に頑張っている方は五万といる。
ただ、違いといえば著者がもともと著名な人物であったというだけだろう。
「寡黙なる巨人」を読みながらミケランジェロのダビデ像をイメージしたこと 
(2007-12-04)
表紙をめくって、1時間半余り、私はこの本に躍る活字に惹き付けられるようにして一気に読んだ。脳梗塞に倒れ、不自由な手でワープロを打つ、多田富雄氏のことが偲ばれた。すると、本に向かい自然に頭が下がる思いがした。
「寡黙なる巨人」とは、多田氏自身の脳裏の中で、胎動し始めたもう一人の人格を指している。私はこの本を読みながら、何故か、フィレンツェの市庁舎にあるダビデ像を思った。それは若きミケランジェロが、自由都市「フィレンツェ」のために彫った高さ4mの巨大大理石像のことだ。
本来、ダビデは、巨人とは呼ばれない。巨人とは、青年ダビデが大きな瞳で見上げている伝説の怪物「ゴリアテ」のことだ。ダビデは、この怪物を石の礫(つぶて)で倒したとされる。
現在多田氏は、不自由な体にむち打ってリハビリ医療制度の改悪と命がけで闘っている。その姿は、ゴリアテという怪物に立ち向かうダビデのイメージそっくりだ。
私はこの著を読みながら、多田富雄氏の中で目覚めた「寡黙なる巨人」という希望の人格が、実は私たち人間の中にある新たな智慧というものの胎動と考えるようになった。私たちは、21世紀のダビデともいうべき多田氏の「寡黙なる巨人」の智慧を受け継ぎ、さまざまな社会的難問と対峙し、これと真摯に闘っていく覚悟を持たなければならない。
脳梗塞からの再生 
(2007-11-07)
著名な免疫学者(東大名誉教授)が、脳梗塞となってからの6年間を記した本。
旅先の金沢で、左中脳動脈領域の脳梗塞を発症。右不全麻痺と構語障害と嚥下障害。
歩けない、話せない、食べれない。しかし、著者の頭脳は更に冴えてくる。
リハビリにて新たに出来ることが増える自己を「寡黙なる巨人」と考察する。
更にリハビリや現代医療・社会に対しての洞察、そして行動。リハビリ日数制限を行う厚生労働省への反対意見。
著者の前向きな姿勢に、教えられることが多い一冊です。