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僕らは知らなければならない 
(2008-12-25)
私たちは実に自分たちの近代史に対して無知ではないかと感じた。
自衛隊のエライさんが子供じみた歴史観をひけらかすのが、彼が
批判した自虐的歴史観と本質的にはいっしょではないかと思う。
筆者である森達也の視点は必ずしもパースペクティヴではないかも
知れない。しかし、真実に近寄ろうとする姿勢に対して敬意をはら
いたい。日露戦争のラッキーパンチ的勝利から太平洋戦争敗戦まで
一体日本人は何をしていたのだろう。どうしてベトナムの革命家と
王子を失意のままにしてしまったのだろう。
ただ事実としてクォンデは日本で思いを遂げずに死んでいったのだ。
我々はそのことただひとつを忘れることは許されないと感じた。
是非ともこの本を手にして読んでいただきたい。どう感じるかはあ
なた次第でも、僕らはクォンデのことを知らなければならない。
記憶される歴史。消えていく物語。語り部を待つ。 
(2007-08-15)
森達也『クォン・デ―もう一人のラスト・エンペラー』角川文庫
ベトナムの王子は、東京の片隅で、誰にも知られず息絶えた。ぼくの全く知らなかった歴史物語が、この本では語られてます。ひどく面白い本です。これまでの森さんの作品とは少し雰囲気が違うけど、ところどころで強く感じられる森さんの息遣いは、やはり森さんのものです。ただの歴史書でもなく、小説でもなく。それにしても、とぼくはつくづく思う(森さん風)、国家とはなんなのか、国家独立という夢は家族よりも重いものなのか、国家と国家のあいだで翻弄される人々のなんと多いことか。王とはなにか。ひとびとの希望とはなにか。どれほど多くの物語が、歴史のなかで消えていったのか、と。
時間が行ったり来たり。最後に森さんの思惑ががっつりと覆されるのが、またおもしろい。たんなる学者だったらこんな風には書けない。
森さんには、こういう仕事も期待してしまう。がんばって下さい。
アジア主義再考 
(2007-08-15)
明治日本には、中国はじめアジアから多くの改革家・革命家がきたけれど、日露戦争の後、「アジア解放」という日本のスローガンは変質してゆき、次第に日本に裏切られてゆく。というのが、超紋切り型日本とアジアの歴史です。この本も、ベトナムの皇族の一人が改革を夢見て日本に来て、そして裏切られるケースを扱っています。日本人は誰も彼のことを知らない。
しかし、面白いのは、小説仕立てのストーリーの後、それを覆すような現地取材のルポ。ベトナムの英雄だろうという思い込みは覆され、主人公の意外な姿が浮かび上がります。さすが「A」「A2」のドキュメンタリー作家。たんにアジア主義批判で終わらない。映像から文字へ移っても、納得できるまで現実に寄り添って考える姿勢は健在です。
「〜だろう」という思い込みを排して、アジア主義をしつこく考え、現地体験を重視する。著者の姿勢はジャーナリストとして健全です。もちろん、明治にあった可能性が失われてゆくという構成は、司馬遼太郎の「健全な国家=明治」と同じであり、それは容易にナショナリズムに利用されてしまうといううらみは残りますが。でも、「しつこく考える」著者と一緒に頭がよくなる気がするいい本です。